判旨
食糧緊急措置令11条が規定する事項が、憲法21条が保障する表現の自由(集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由)に違反しないことを判示した。
問題の所在(論点)
食糧緊急措置令11条は、憲法21条(集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由)に違反し、違憲ではないか。
規範
憲法21条が保障する表現の自由は、公共の福祉による制限を受けるものであり、特定の法令が同条に違反するか否かは、当該法令の目的および手段が正当な範囲内にあるかによって判断される(昭和24年5月18日大法廷判決参照)。
重要事実
被告人は食糧緊急措置令違反の罪に問われ、同令11条の合憲性が争点となった。被告人側は、同条が憲法21条の表現の自由に違反する旨を主張して上告した。なお、本判決文からは被告人が具体的にどのような行為を行い、同令のどの規定に抵触したのかという詳細な事実は不明である。
あてはめ
当裁判所は、昭和24年5月18日大法廷判決等の先例を引用し、食糧緊急措置令11条が憲法21条に違反しないことは既に判例として確立していることを確認した。本件においても、右判例を維持すべきであり、同条が憲法21条に抵触するとの論旨は採用し得ない。また、被告人が主張するその他の点は、単なる事実誤認の主張にすぎず、上告理由として適法ではない。
結論
食糧緊急措置令11条は憲法21条に違反しない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、初期の最高裁が表現の自由と公共の福祉の関係について示した判断を再確認するものである。司法試験等の答案においては、表現の自由を制約する法律の合憲性判断において、初期判例が抽象的な公共の福祉による制約を認めていた文脈として参照されることがあるが、現代的な厳格な基準(LRAの基準等)とは異なる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和24(れ)498 / 裁判年月日: 昭和27年1月9日 / 結論: 棄却
一 食糧緊急措置令一一条の違反たるには、主要食糧の政府に対する売渡を本質的、全面的に否定することを煽動すると、その売渡の数量の一部を売り渡さないこと若しくは供出時期迄に売り渡さないことを煽動するとを問わないこと論をまたない。 二 主要食糧の政府に対する売渡を為さざることを煽動するが如き言動を処罰することは何等憲法第二一…
事件番号: 昭和24(れ)1839 / 裁判年月日: 昭和25年1月19日 / 結論: 棄却
一 國民が政策を批判し、その失敗を攻撃することは、その方法が公安を害しない限り、言論その他一切の表現の自由に屬するのであらうが、しかし、現今における貧困な食糧事情の下に國家が國民全体の主要食糧を確保するために制定した食糧管理法所期の目的の遂行を期するために定められた同法の規定に基く命令による主要食糧の政府に對する賣渡に…
事件番号: 昭和27(あ)3429 / 裁判年月日: 昭和29年2月23日 / 結論: 棄却
食糧緊急措置令の収用と憲法三五条の押収とは全く無関係のものであるこという迄もない。論旨第一点の如きは全く違憲に名を藉るものと見ざるを得ない。