食糧管理法施行規則二九条(改正前のもの)にいわゆる主要食糧の輸送とは取引の通念に従い主要食糧の所在を移動すると目される所為を指称するのであり、もとより一家内において「物置から台所に運ぶ」が如き所為を含まないこと勿論であるが、所論のごとく「他の都府県に移出」するのでなければ、こゝにいわゆる輸送に該当しないということはできない。
食糧管理法施行規則第二九条(改正前のもの)にいわゆる「輸送」の意義
食糧管理法施行規則29条(改正前のもの)
判旨
食糧管理法施行規則29条にいう主要食糧の「輸送」とは、取引の通念に従い、主要食糧の所在を移動すると認められる行為を指す。一家内での移動のような軽微なものは含まれないが、都道府県外への移出であることを要しない。
問題の所在(論点)
食糧管理法施行規則29条が禁止する主要食糧の「輸送」の意義および範囲が問題となる。特に、都道府県外への移出であることを要するか、または一家内の移動のような極めて限定的な範囲に限られるかが争点となった。
規範
「輸送」とは、取引の通念に従い、主要食糧の所在を移動する行為を指称する。もっとも、一家内において物置から台所に運ぶような、社会通念上「輸送」に当たらない行為は含まれない。他方、都道府県外への移出を伴う場合に限定されず、公正かつ適正な配給を確保し、食糧管理法の目的を遂行するために必要な範囲で広く解釈される。
重要事実
被告人は主要食糧の輸送を行ったとして、旧食糧管理法9条1項および同法施行規則29条違反の罪に問われた。被告人側は、同条にいう「輸送」とは「他の都道府県に移出すること」を意味し、同一県内での移動は含まれないと主張して上告した。原審は被告人の行為を輸送に該当すると判断した。
あてはめ
本件における被告人の行為は、一家内での移動のような極めて限定的な所在の移動には当たらない。また、行政が物資確保のために都道府県外への移出を制限する場合とは異なり、本規則の目的は主要食糧の適正な配給の確保にある。したがって、取引の通念に照らして所在の移動と目される行為であれば、都道府県をまたぐ移動でなくとも「輸送」に該当すると評価される。原審の認定事実に照らせば、被告人の行為は「輸送」に該当する。
結論
被告人の所為は、食糧管理法施行規則29条にいう主要食糧の「輸送」に該当する。したがって、都道府県外への移出を要しないとした原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
行政法規における用語解釈の基準を示す。目的論的解釈に基づきつつ、「取引の通念」という客観的尺度を用いて、可罰的な「輸送」と、日常的な「移動」を区別する際の判断枠組みとして活用できる。特に「都道府県外への移出」という限定を付さなかった点は、法の目的遂行を重視した射程を持つ。
事件番号: 昭和25(れ)1182 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
食糧管理法にいわゆる主要食糧の輸送とは主要食糧の所在を一定の場所より他の場所に移動する一切の所為を指し、その移動する距離の長短を問はない趣旨と解するのを相当とするから、所論のように、たとい、判示A製粉所と被告人Bの判示住居とは同一大字内で接近しているとしても、被告人等の判示所為は同法令にいわゆる主要食糧の輸送に該当する…