食糧管理法第九条にいう譲渡その他の処分の中には、売買をも含むものと解するのが相当である。従つて、同法第九条は、政府が本件の如き主要食糧の買受行為を禁圧するため必要な命令をなすことを得る趣旨をも包含するものと解すべきは勿論である。
食糧管理法第九条の法意
食糧管理法9条
判旨
食糧管理法9条(当時)が規定する「譲渡その他の処分」には売買が含まれ、政府は主要食糧の買受行為を禁止する命令をなす権限を有する。
問題の所在(論点)
食糧管理法9条(旧法)の「譲渡その他の処分」に関する命令権限の規定に、主要食糧の「買受行為」を禁止する命令をなすことが含まれるか。
規範
法規上の「譲渡その他の処分」という文言には、その性質上、売買行為も当然に含まれる。したがって、当該条項に基づき、特定の物資の流通を規制するために買受行為を禁止・制限する命令を発することは、法の委任の範囲内にあると解される。
重要事実
被告人は、食糧管理法に基づく制限に反して主要食糧の買受行為を行ったとして起訴された。弁護人は、同法9条が政府に認めた命令権限の範囲に「買受」を禁圧することは含まれない旨を主張して上告した。なお、具体的な取引量や日時等の詳細は判決文からは不明である。
あてはめ
食糧管理法9条によれば、政府は主要食糧の「配給、加工、製造、譲渡その他の処分、使用、消費、保管及移動ニ関シ」必要な命令をなすことができる。ここでいう「譲渡その他の処分」という表現を合理的に解釈すれば、譲渡の対価を伴う態様である「売買」を包含するものと解するのが相当である。そうであるならば、主要食糧の流通を統制する目的で、買主側による買受行為を規制・禁止することも、同条が意図した「譲渡その他の処分」に関する必要な命令の範囲内に含まれると評価できる。
結論
食糧管理法9条は、政府が主要食糧の買受行為を禁圧するために必要な命令をなすことを得る趣旨を包含する。したがって、当該行為を処罰する原判決は正当である。
実務上の射程
行政上の取締法規における「処分」や「譲渡」の文言解釈において、反対給付を伴う行為(売買)や、その対向関係にある行為(買受)が当然に含まれるかという文言解釈の指針として活用できる。もっとも、現代の罪刑法定主義や明確性の原則の観点からは、より厳密な委任の範囲が問われる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)3287 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: 棄却
主要食糧を違法に買受けた者がこれを違法に輸送した場合といえども、その輸送の罪(食糧管理法九条、三一条、同法施行令一一条、同法施行規則二九条一項の罪)が成立することもちろんである。