主要食糧を違法に買受けた者がこれを違法に輸送した場合といえども、その輸送の罪(食糧管理法九条、三一条、同法施行令一一条、同法施行規則二九条一項の罪)が成立することもちろんである。
主要食糧の買受罪と輸送罪との関係
刑法45条,食糧管理法9条,食糧管理法施行令11条,食糧管理法施行規則29条
判旨
食糧管理法における主要食糧の「譲渡その他の処分」には買受行為も含まれ、違法な買受後に当該食糧を輸送する行為は、買受の罪に吸収されず別途輸送の罪が成立する。
問題の所在(論点)
1.食糧管理法9条1項の「譲渡その他の処分」に、買受行為が含まれるか。2.違法な買受行為の後に、当該食糧を輸送した行為が、買受の罪に吸収されるか。
規範
1.食糧管理法9条1項の「譲渡その他の処分」とは、広く主要食糧の所有権の移転に関連する行為を指し、買受行為もこれに含まれる。2.違法な買受行為と、その後の違法な輸送行為は、前者が後者に当然に吸収される関係にはなく、各別に罪が成立し得る。
重要事実
被告人らは、食糧管理法に基づき制限されている主要食糧(大豆)を違法に買い受け、さらにそれを輸送したとして、同法違反(買受および輸送の罪)に問われた。被告人側は、同法9条1項は「譲渡」等を規定するのみで買受を禁止する根拠にならないこと、および買受罪が成立する場合、その後の輸送は不可罰的事後行為として吸収されるべきであることを主張して上告した。
あてはめ
1.「譲渡その他の処分」の文言は、単に譲渡人側の行為のみを指すのではなく、所有権移転という現象に関連する一連の行為を包括すると解するのが法の趣旨に合致する。したがって、譲受人による買受行為もこれに含まれる。2.買受行為は所有権の取得段階の違法を問うものであるのに対し、輸送行為は流通の禁止・制限に違反する別個の態様の行為である。したがって、買受の罪が成立するからといって、その後の輸送行為が当然に吸収されると解すべき根拠はない。
結論
主要食糧の買受行為は食糧管理法上の禁止対象に含まれ、かつ、その後の輸送行為についても独立して罪が成立する。
実務上の射程
罪数論における吸収関係の成否が問題となる場面、特に「不可罰的事後行為」の成否を論じる際の比較対象として機能する。また、行政刑法における「譲渡」概念が取引の両当事者を包含し得ることを示す一例として利用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5732 / 裁判年月日: 昭和29年6月7日 / 結論: 棄却
食糧管理法九条にいう譲渡その他の処分の中には売買を含むものと解するのが相当であり、従つて同条は政府が本件の如き主要食糧の買受行為を禁圧するため必要な命令をなすことを得る趣旨をも包含するものと解すべきであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)四八九六号同二七年一二月一九日第二小法廷判決参照)、そして同…