食糧管理法九条にいう譲渡その他の処分の中には売買を含むものと解するのが相当であり、従つて同条は政府が本件の如き主要食糧の買受行為を禁圧するため必要な命令をなすことを得る趣旨をも包含するものと解すべきであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)四八九六号同二七年一二月一九日第二小法廷判決参照)、そして同法施行令七条及び同法施行規則四〇条が同法九条による委任の範囲内で適法に定められたものと認められるから原判決には所論の法令違反は存しない。
食糧管理法施行令第七条及び同法施行規則第四〇条は同法第九条による委任の範囲内に属するか
食糧管理法9条,食糧管理法施行令7条,食糧管理法施行規則40条
判旨
食糧管理法9条にいう「譲渡その他の処分」には売買が含まれ、同条は政府が主要食糧の買受行為を禁止・制限するために必要な命令を発する権限を包含する。
問題の所在(論点)
食糧管理法9条にいう「譲渡その他の処分」の意義。政府が主要食糧の買受行為を禁止する命令を制定することは、同法の委任の範囲内にあるといえるか。
規範
法律の規定(食糧管理法9条)にいう「譲渡その他の処分」とは、その文言の趣旨に鑑み、売買契約による権利の移転行為を当然に含むものと解される。また、当該規定は、政府が主要食糧の流通を統制し、不法な買受行為を禁圧するために必要な命令を制定する権限を委任する趣旨を包含する。
重要事実
被告人が、食糧管理法及び同法施行令・施行規則に違反して、主要食糧の買受行為を行ったとして起訴された事案。弁護人は、同法9条の「譲渡その他の処分」には買受行為を禁ずる命令を出す権限まで含まれておらず、本件の処罰根拠となる施行令等の規定は委任の範囲を逸脱し違法であると主張して上告した。
あてはめ
食糧管理法9条は「譲渡その他の処分」を規制対象としているが、売買は譲渡の典型的な態様であり、これに含まれる。同法が主要食糧の適正な配分を目的とする以上、供給側だけでなく需要側の買受行為を規制することも、その目的に照らし必要不可欠な措置といえる。したがって、同法施行令7条及び同法施行規則40条による規制は、法9条の委任の範囲内で適法に定められたものと評価できる。
結論
食糧管理法9条の「譲渡」には売買が含まれ、同法に基づく買受行為の制限は委任の範囲内であり適法である。したがって、被告人を処罰した原判決に法令違反はない。
実務上の射程
行政刑法における白地刑罰法規の委任の範囲に関する解釈指針として機能する。法律の文言を弾力的に解釈し、法の目的に照らして必要な規制を委任の範囲内とする判例傾向を示すものとして、委任立法の限界が争われる場面で引用し得る。
事件番号: 昭和26(あ)4896 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
食糧管理法第九条にいう譲渡その他の処分の中には、売買をも含むものと解するのが相当である。従つて、同法第九条は、政府が本件の如き主要食糧の買受行為を禁圧するため必要な命令をなすことを得る趣旨をも包含するものと解すべきは勿論である。