食糧管理法九条一項は、命令に委任する範囲として、「主要食糧ノ公正且適正ナル配給ヲ確保シ」の外、なお「其ノ他本法ノ目的ヲ遂行スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ」と定めているから、同法施行令八条の「主要食糧の適正な流通を確保するため……」という趣旨をも当然含むのであつて、なんら授権の範囲を越えるものではない。その他の論旨については、所論一に説明したとおりであるから、違憲の主張はいずれも理由がない。
食糧管理法第九条第一項と同法施行令第八条との関係
食糧管理法9条1項,食糧管理法施行令8条
判旨
憲法73条6号但書は、法律に具体的な委任がある場合には、政令で犯罪構成要件や刑罰を定めることを認める趣旨である。また、法律が政令に大枠の規定を委任し、さらにその範囲内で細則を省令等の命令に再委任することも、法律の目的に照らし必要と認められる範囲内であれば合憲である。
問題の所在(論点)
法律が罰則を伴う事項の規定を政令に委任し、さらにその政令の枠内で細則を省令等の命令に委任すること(再委任)は、憲法73条6号但書にいう「法律の委任」の範囲として許容されるか。また、食糧管理法9条による委任は授権の範囲を逸脱し違憲となるか。
規範
憲法73条6号但書の法意は、法律の委任がある場合には、政令で罰則(犯罪構成要件及び刑)を設けることができること、及び法律が罰則の設定を政令に委任できることを表明したものである。また、法律が主要事項について政令で必要な枠を定めることを委任し、その枠内で細則を命令に委任することは、法律の目的遂行のために特に必要と認められる範囲内であれば、憲法73条6号但書に違反しない。
重要事実
被告人は食糧管理法施行規則37条に違反する行為を行ったとして起訴された。弁護人は、同条の根拠となる食糧管理法9条が、政令のみならず「命令」(省令等)にまで広範な委任を行っている点や、施行令が法律の授権範囲を超えている点等を捉え、憲法73条6号但書に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
食糧管理法9条1項は、命令に委任する範囲として「主要食糧の公正かつ適正な配給を確保」するほか、「その他本法の目的を遂行するため特に必要ありと認めるとき」と規定している。これを受け、同法施行令8条が「主要食糧の適正な流通を確保するため」とした趣旨は、法9条の目的に包含される。したがって、施行規則37条の規定は、法が定めた目的遂行のための必要性という枠組みの中にあり、白紙委任や授権範囲の逸脱には当たらない。
結論
本件委任規定およびこれに基づく命令の規定は合憲である。したがって、被告人の違反行為を処罰する原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
白紙委任禁止の原則(憲法73条6号但書)に関する基本判例である。法律で直接、具体的な構成要件を定めず、政令やさらにその下の命令(省令)に委任する場合であっても、法律において委任の目的や範囲が特定されており、実務上の必要性が認められる場合には、再委任を含め肯定される。答案上は、委任の具体性・個別性を判断する際の枠組みとして引用する。
事件番号: 昭和27(あ)5732 / 裁判年月日: 昭和29年6月7日 / 結論: 棄却
食糧管理法九条にいう譲渡その他の処分の中には売買を含むものと解するのが相当であり、従つて同条は政府が本件の如き主要食糧の買受行為を禁圧するため必要な命令をなすことを得る趣旨をも包含するものと解すべきであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)四八九六号同二七年一二月一九日第二小法廷判決参照)、そして同…