判旨
食糧管理法等の規制下において、米の生産者が保有米の範囲内で加工を他人に委託し、そのために輸送を行うことが適法となる場合があるとしても、法定の除外事由がない限り、当該規制に違反する行為は違法性を阻却しない。
問題の所在(論点)
食糧管理法等の規制に抵触する米の輸送・加工受託行為について、生産者による保有米の加工委託という形式をとる場合に、刑法35条の正当業務行為として違法性が阻却されるか、あるいは法令の範囲内として適法とされるか。
規範
刑法35条の正当業務行為として違法性が阻却されるためには、当該行為が法令又は正当な業務によるものであることを要する。食糧管理法等の行政規制が介在する場合、特定の例外的事情(生産者が保有米の範囲内で加工委託を行う等)に該当すれば適法となり得るが、それ以外の態様で規制に反する行為は、特段の事情がない限り正当業務行為とは認められない。
重要事実
被告人両名は、当時の食糧管理法等の規制に違反して米の加工・輸送に関わる行為を行った。被告人側は、米の生産者が保有米の範囲内で自ら原材料として使用するために加工を他人に委託し、そのために輸送することは適法であると主張し、本件行為が憲法13条や正当業務行為の観点から適法であると争った。しかし、第一審及び原審は、被告人らの行為に法定の除外事由(適法となる例外的事情)が存在しないことを証拠に基づき認定した。
あてはめ
米の生産者が保有米の範囲内で加工を他人に委託し、そのために輸送することは、特定の場合には適法となり得る。しかし、本件においては、被告人両名についてそのような法定の除外事由(適法な加工委託や輸送に該当する事実)が認められない。原判決が証拠に照らして被告人の主張するような適法な事実関係を否定し、規制違反を認定した判断は正当である。したがって、被告人らの行為が正当な業務であるとの主張は前提を欠く。
結論
被告人らの行為には法定の除外事由がなく、規制に違反するものであるため、正当業務行為等の適法性を基礎付ける事情は認められず、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
行政規制違反の事案において、形式的には正当な業務に見える場合(生産者による加工委託等)であっても、実質的に法定の除外事由を欠く場合には違法性が阻却されないことを示す。答案上は、刑法35条の検討において、当該行為が行政法令の許容する範囲内(除外事由)にあるか否かを事実認定に基づいて判断する際の枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4847 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法等の規制に基づき、法定の除外事由がない限り、米麦等をその生産者から買い受ける行為は、同法違反の罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、米麦等の主要食糧をその生産者から買い受けたとして、食糧管理法違反で起訴された事案。被告人側は憲法違反等を主張して上…