論旨は、一審判決判示事実につき被告人が輸送委託した目的は自家保有米を密閉器のある自己店舗において殺虫し損害を防止せんとするにあつたから違法性を欠き、更に昭和二八年六月一二日岡山県告示第四七八号にいう、とう精その他加工のため米穀類を輸送できる場合にあたり適法な行為であるとする。しかし、本件事案(註。一審判示事実の要旨は「被告人は昭和三十年九月一一日頃、岡山県小田郡a町なる自宅の雑穀商店舗において、相被告入に対し、粳玄米六二一託及び糖玄米三〇瓩を同郡b町大字cなる自宅より前記店舗まで輸送方委託をなした」というもの)においては所論の事由が法定の除外事由その他違法性を欠くものとして許される場合にあたらない旨の原判示はこれを是認するに足り、論旨のいう岡山県告示は「とう精その他加工のため米穀類を輸送できる者は、自己の所有する米穀類を最寄(同一町村又は隣接市町村)加工所まで輸送する者及び加工所から自宅ま で輸送する者とする。」と規定するのであるが、本件の場合が「とう精その他加工のため」の輸送であるとも認められないところであるから、所論告示を援用する論旨も当らない。
米穀類の輸送委託が違法性を欠くものとして許される場合にあたらないとされた事例
食糧管理法施行規則47条,昭和28年6月12日岡山県告示478号
判旨
食糧管理法違反の事案において、法令上の除外事由に該当せず、かつ殺虫保存という目的が認められない以上、違法性は阻却されない。
問題の所在(論点)
食糧管理法に基づく輸送制限に違反する行為について、殺虫保存という目的や、加工のための輸送を認める告示の存在によって、違法性が阻却されるか。
規範
法令により禁止された行為であっても、法令上の除外事由(告示等による適法な輸送範囲)に該当する場合、または正当な業務行為等として違法性が阻却される余地がある場合には処罰されない。しかし、これらに該当しない場合には、実質的な違法性が認められる。
重要事実
被告人は、米穀の輸送が制限されている状況下で、粳玄米2160kgの輸送を委託した。弁護人は、この輸送が「自家保有米を自己店舗において殺虫し、損害を防止するため」のものであり、また岡山県告示に基づく「加工のための輸送」に該当するため適法であると主張した。しかし、第一審判決では殺虫保存の事実は認定されておらず、また輸送先が「最寄りの加工所」等であるという告示の要件も満たしていなかった。
あてはめ
まず、被告人が主張する「殺虫保存」という目的は、一審判決において事実として認定されておらず、違法性を欠く事由として認めるに足りない。次に、岡山県告示は自己所有米を最寄りの加工所まで輸送する場合等を適法としているが、本件は「とう精その他加工のため」の輸送とは認められず、告示の定める要件を充足しない。したがって、形式的な法違反を正当化する実質的理由はないといえる。
結論
本件輸送は法定の除外事由等に当たらず、違法性は阻却されない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
行政法規違反(食糧管理法等)における違法性阻却事由の検討において、告示等の例外規定の充足性と、被告人が主張する主観的目的(殺虫等)の事実認定および正当性の有無が判断枠組みとなる。答案上は、形式的要件(告示)の不充足と実質的正当性の欠如を分けて論じる際の参考になる。
事件番号: 昭和27(あ)512 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法等の規制下において、米の生産者が保有米の範囲内で加工を他人に委託し、そのために輸送を行うことが適法となる場合があるとしても、法定の除外事由がない限り、当該規制に違反する行為は違法性を阻却しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、当時の食糧管理法等の規制に違反して米の加工・輸送に関わる行為…