食糧管理法施行規則第四七条列挙の事由の存しない限り、主食の適法な借用行為に基いてこれを輸送する場合であつても、犯罪の成立を妨げるものではない。
主食の借用に伴いこれを輸送する場合と食糧管理法施行規則第四七条
食糧管理法施行規則(昭和27年5月31日農林、運輸省令2号による改正前)47条
判旨
食糧管理法に基づく主食の輸送禁止の趣旨は、食糧の需給調整や配給統制を維持することにある。そのため、法令の除外事由に該当しない限り、輸送の目的や基礎となる取引が適法であっても、輸送行為自体の違法性は阻却されない。
問題の所在(論点)
食糧管理法上の輸送禁止規定に抵触する行為について、その基礎となる米の借用行為が適法である場合、当該輸送行為の違法性が阻却されるか。
規範
主食の輸送を禁止し刑罰を科す趣旨は、食糧の需給調整を妨げ、あるいは配給の統制を乱す等の素因となる不法取引を絶滅させるため、輸送そのものを取り締まる必要がある点にある。したがって、輸送が適法となるのは施行規則に列挙された除外事由に該当する場合に限られ、たとえ輸送の基礎となる行為(借用行為や自己消費目的等)が適法であっても、それだけで輸送の違法性は阻却されない。
重要事実
米の生産者である被告人らは、飯米が不足したため、後日自ら生産した米で返還することを約して、第三者から粳(うるち)玄米を借り受けた。被告人らは、この借用した米を貸主の自宅から自己の居住地まで運搬したところ、食糧管理法違反(無許可輸送)として起訴された。
あてはめ
本件における粳玄米の輸送は、食糧管理法施行規則47条が規定する除外事由のいずれにも該当しない。被告人らは、基礎となる借用行為が適法であることをもって輸送の適法性を主張するが、同法の目的は輸送行為そのものを管理することで配給統制を維持することにある。したがって、たとえ借用行為自体が法に触れないものであったとしても、許可なく輸送を行うことは統制を乱す恐れがあるため、直ちに違法性が阻却される理由にはならない。
結論
本件輸送行為は、基礎となる借用行為が適法であるか否かにかかわらず、食糧管理法違反の罪を構成する。被告人らの有罪を維持した原判決に法令違反はない。
実務上の射程
行政取締法規における「形式的違反」の処罰の可否が問題となる場面で、立法趣旨(行政目的の達成)を重視して、基礎となる私法上の行為の適法性が公法上の規制違反に直ちに影響しないことを示す一例として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)512 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法等の規制下において、米の生産者が保有米の範囲内で加工を他人に委託し、そのために輸送を行うことが適法となる場合があるとしても、法定の除外事由がない限り、当該規制に違反する行為は違法性を阻却しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、当時の食糧管理法等の規制に違反して米の加工・輸送に関わる行為…