上告趣意第二点は賍物牙保罪と印紙犯罪処罰法二条の罪との間に刑法五四条一項前段の適用を主張し原判決の認定した前者の罪のほか新らたに後者の罪の成立をも主張するのであつて、被告人に不利益な主張であるから不適法である。
上告理由として被告人に不利益な主張となる一事例
刑訴法402条,刑訴法411条1号
判旨
被告人に不利益となる新たな罪の成立を主張する上告趣意は、上告理由として不適法であり、裁判所はこれを採用しない。
問題の所在(論点)
被告人の弁護人が、原判決で認定された罪に加えて、新たに別の罪の成立をも主張し、被告人に不利益な結果を招く主張を行うことが上告理由として適法か。
規範
上告審において、被告人にとって不利益な方向での法令適用(新たな犯罪の成立を主張すること等)を求める主張は、上告理由として認められない。
重要事実
被告人は贓物牙保罪(現:盗品等媒介罪)に問われていた。これに対し、弁護人は上告審において、当該行為が贓物牙保罪だけでなく、印紙犯罪処罰法2条の罪にも該当し、両者が刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると主張した。
あてはめ
弁護人の主張は、原判決が認定した贓物牙保罪のほかに、新たに印紙犯罪処罰法違反の罪が成立することを前提とするものである。このような主張は、罪数の評価において被告人に不利益な判断を求めるものである。刑事訴訟法405条の上告理由において、被告人の救済を目的とする上告制度の趣旨に照らし、被告人に不利益な主張をすることは不適法といえる。また、記録を精査しても刑訴法411条を適用して職権で破棄すべき事情も認められない。
結論
被告人に不利益な主張は上告理由として不適法であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
弁護人が上告理由を構成する際、構成要件の重なり(観念的競合)を主張して刑の減軽を狙う意図があったとしても、それが実質的に新たな罪の成立を認めることになる場合、被告人への不利益な主張として排斥される可能性がある点に注意が必要である。実務上は、被告人の利益を守るという弁護人の役割の限界を示す事例として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)4320 / 裁判年月日: 昭和29年1月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書が法定の提出期間を徒過して提出された場合や、主張の実質が訴訟法違反にすぎないのに違憲を主張する場合は、上告理由として不適法であり、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、賍物故買、賍物牙保、賍物寄蔵被告事件について上告を申し立てた。しかし、弁護人が提出した上告趣意書は、法定…
事件番号: 昭和29(あ)3353 / 裁判年月日: 昭和30年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審で主張および判断がなされなかった事柄を新たに上告趣意として主張することは、刑訴法405条の上告理由として不適法である。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、上告趣意第一点において原審で主張および判断のなかった事柄を新たに主張し、同第二点において量刑の不当を主張して上告を申し立てた。 第2 問題…