判旨
併合罪の関係にある複数の行為に対し、判決の法令適用欄において刑法47条等の条文を複数回掲記することは、併合罪の加重を繰り返す擬律錯誤ではなく、全行為につき一括して併合罪の規定を適用した趣旨と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
併合罪の関係にある数個の罪に対し、判決書の中で併合罪加重の規定(刑法47条等)を複数回にわたり引用・掲記することが、擬律上の錯誤(二重加重の違法)に該当するか。
規範
併合罪(刑法45条前段)の関係にある複数の罪について刑を科す場合、法令適用の表示において刑法47条、10条等の関係条文を複数箇所にわたり掲記したとしても、それが全行為に対して一括して適用する趣旨であると解される限り、二重に加重を行った擬律上の錯誤には当たらない。
重要事実
被告人の3つの行為が併合罪の関係にあり、第一審判決はその法令適用の部において、刑法47条、10条、45条を3箇所にわたって掲記判示していた。弁護人は、これが刑法47条の併合罪の加重を3回にわたり繰り返した擬律上の錯誤であると主張して上告した。原審は、この掲記を不当としつつも、判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却していた。
あてはめ
第一審判決が刑法47条等を3箇所にわたり掲記した点は、併合罪に関する適条判示としてやや妥当を欠く面はある(最後の一箇所で判示するのが相当である)。しかし、その実質的な趣旨は、本件併合罪の関係にある3つの全行為に対し、一括して1回分の併合罪規定を適用したものと解するのが合理的である。したがって、形式的な掲記の重複があったとしても、実質的に3回加重したという錯誤があるとは到底認められない。
結論
本件の適条判示は、擬律上の錯誤には当たらず、第一審判決を維持した原判決の結論は正当である。
実務上の射程
判決書における法令適用の記載方法に関する事例判断。複数の罪について併合罪加重を行う際、各罪の項目ごとに条文を引用する実務上の慣習が「二重加重」と誤認される懸念に対し、判決全体の趣旨から一括適用と解釈できることを示した。答案上は、判決書の形式的不備が直ちに擬律錯誤(法令適用の誤り)にならない根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1898 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】判示された一個の犯罪事実に対し、あたかも二個の犯罪事実があるかのように錯覚して法律を適用する擬律錯誤は、判決に影響を及ぼすべき違法であり、破棄事由となる。 第1 事案の概要:被告人は麻薬取扱者ではないにもかかわらず、共犯者と共謀の上、昭和24年7月26日頃に麻薬である燐酸コデイン約1kgを所持した…
事件番号: 昭和31(あ)4748 / 裁判年月日: 昭和35年3月29日 / 結論: 棄却
昭和三一年一〇日頃譲渡したと認められた覚せい剤一、一〇〇本位および同年四月八日頃所持していたと認められた覚せい剤約二八一本が、同年一月初旬頃密造したと認められた覚せい剤約一、八〇〇本の一部であつたとしても、右譲渡および所持は、その方法態様において密造に当然随伴する行為とは認められないから、所論のように事後の処分行為と認…