判旨
不法侵入罪および傷害罪の共同正犯の成否について、犯行の意思がない、あるいは物理的に住居内へ立ち入っていないとする主張があっても、目撃証言等の証拠に基づき犯行事実が認められる場合には、有罪判決を維持するのが相当である。
問題の所在(論点)
被告人が住居内に立ち入っておらず、かつ加害の意思もなかったと主張する場合において、供述証拠等の総合評価により住居侵入および傷害の共同正犯を認定することができるか。
規範
共同正犯(刑法60条)および住居侵入罪(刑法130条前段)・傷害罪(刑法204条)の成否は、客観的証拠および供述証拠に基づき、実行行為の分担や共謀の存在を認定して判断する。特に実行行為の一部を分担していないとの主張に対しても、供述の整合性や証拠関係の総合的評価により、現場における加害行為や侵入の事実を確定する。
重要事実
被告人は、A方への不法侵入および傷害の罪で起訴された。被告人は、犯行の意思はなくA方へ一歩も足を踏み入れていないこと、また現場へ行った動機は同胞を救出するという合法的な目的であったと主張し、一審・二審の事実認定には差別的偏見や証拠の捏造があると争った。しかし、第一審では、被告人が丸椅子で被害者Aを殴打した事実について、目撃者の証言や供述調書等の複数の証拠が示されていた。
あてはめ
判旨は、被告人が判示の日時場所に立ち入り、Aを丸椅子で殴った事実について、証人Bの証言やC・D・Eらの供述調書を総合すれば「明瞭である」とした。これにより、被告人が主張する「足を一歩も踏み入れていない」との事実に反する弁解は排斥される。また、動機が合法的な救出目的であったとの主張も、一審が認定した事実に照らし採用されず、記録上も差別的処遇や証拠の捏造を認めるに足りる事情はないと判断された。
結論
被告人によるA方への住居侵入および傷害の共同正犯の成立を認めた原判決に事実誤認はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、事実認定の妥当性を中心に判断したものであるが、共同正犯の認定において、具体的凶器(丸椅子)の使用や目撃証言が有力な根拠となることを示している。答案上は、不法な動機や物理的立ち入りの存否が争点となる事案において、客観的証拠による事実確定の重要性を裏付けるものとして活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3644 / 裁判年月日: 昭和28年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪の共同正犯について、起訴状記載の訴因を解釈し、審理の結果に基づき共同正犯の成立を認めた原審の判断を維持したものである。 第1 事案の概要:被告人らは、住居侵入の事実により起訴された。第一審判決は、起訴状に記載された訴因を解釈し、被告人らを住居侵入の共同正犯と認める事実を認定した。原審もこ…
事件番号: 昭和28(あ)2405 / 裁判年月日: 昭和30年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に掲げられた証拠が、被告人の公判供述のうち特定の事実について「記憶がない」旨を含むものである場合、当該証拠は、記憶がないとされた事実を除外したその他の犯罪事実の証拠として挙示されたものと解すべきである。 第1 事案の概要:被告人は複数の犯罪事実により起訴された。第一審判決は、証拠として「被告…