原判決においては、被告人が逃げるかけておるとき後から首を捕えられたので手で拂いのけたことの供述を證據として掲げておる。これによつて、暴行の意思を認定したのは、肯定し得るところである。論旨は傷害の犯意は認められぬと主張するが、暴行の意思あつて暴行を加へ傷害の結果を生じた以上、たとえ傷害の意思なき場合と雖も、傷害罪は成立するものといわねばならぬ。
傷害罪に於ける犯意
刑法204條
判旨
傷害罪の成立には、暴行の意思をもって暴行を加え、その結果として傷害が生じれば足り、別途傷害の意思(生理的機能を毀損する認識)までは不要である。
問題の所在(論点)
傷害罪(刑法204条)の成立において、結果である傷害に対する認識・認容(傷害の意思)が必要か。暴行の意思に基づく行為から傷害の結果が生じた場合に、傷害罪が成立するか。
規範
傷害罪(刑法204条)が成立するためには、暴行を加える意思(暴行の犯意)をもって暴行に及び、よって傷害の結果が生じたのであれば足りる。客観的に傷害の結果が発生した以上、主観的に傷害の意思(相手を傷つける積極的な意図や認識)が欠けていたとしても、傷害罪の成立を妨げない。
重要事実
被告人は、逃走しようとした際に背後から被害者Aに頸部を掴まれたため、これを振り払おうとして手拳でAの顔面を殴打し、顔面に打撲擦過傷を負わせた。被告人は、首を掴まれたため無意識に手を払いのけたに過ぎず、相手を傷つけるつもり(傷害の犯意)はなかったと主張して、犯意の認定に違法があると争った。
事件番号: 平成19(あ)1223 / 裁判年月日: 平成20年1月22日 / 結論: 棄却
就寝中の被害者にわいせつな行為をした者が,覚せいした被害者から着衣をつかまれるなどされてわいせつな行為を行う意思を喪失した後に,その場から逃走するため,被害者を引きずるなどした暴行は、上記準強制わいせつ行為に随伴するものであり、これによって被害者に傷害を負わせた場合には,強制わいせつ致傷罪が成立する。
あてはめ
被告人は「捕まえられないように暴行したのか」との問いに対し、首を掴まれたために手を払いのけた旨を供述している。この事実は、Aの身体に対する不当な攻撃(払いのけ行為)を認識・認容していたことを示すものであり、暴行の意思を認めるに十分である。このように暴行の意思に基づく行為によってAに傷害の結果が生じた以上、被告人に「相手を傷つけよう」という傷害の意思がなかったとしても、法律上、傷害罪の犯意は認められる。
結論
暴行の意思をもって暴行を加え、傷害の結果が生じた以上、傷害の意思がなくても傷害罪が成立する。原判決に違法はない。
実務上の射程
暴行罪の結実刑としての傷害罪の性格を明示した重要判例である。司法試験答案上は、傷害罪の構成要件を論じる際、故意の内容として「暴行の故意で足りる」ことを示す根拠として活用する。また、暴行の故意すら否定される「反射的動作」との境界が問題となる場面でも、本判決が暴行の意思を肯定した論理が参考になる。
事件番号: 昭和42(あ)493 / 裁判年月日: 昭和42年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法上の正当な争議行為といえるためには、その手段・態様が社会通念上相当な範囲に留まる必要がある。本件では、被告人らの行為は正当性の限界を逸脱したものとして、刑事責任を免れないと判断された。 第1 事案の概要:判決文からは具体的な事実関係の詳細は不明であるが、労働組合員等である被告人らが、争議…