就寝中の被害者にわいせつな行為をした者が,覚せいした被害者から着衣をつかまれるなどされてわいせつな行為を行う意思を喪失した後に,その場から逃走するため,被害者を引きずるなどした暴行は、上記準強制わいせつ行為に随伴するものであり、これによって被害者に傷害を負わせた場合には,強制わいせつ致傷罪が成立する。
準強制わいせつ行為をした者が,わいせつな行為を行う意思を喪失した後に,逃走するため被害者に暴行を加えて傷害を負わせた場合について,強制わいせつ致傷罪が成立するとされた事例
刑法181条1項,刑法178条1項
判旨
準強制わいせつ行為の後に逃走目的で行われた暴行により傷害が生じた場合であっても、当該暴行がわいせつ行為に随伴するものといえるときは、強制わいせつ致傷罪(刑法181条)が成立する。
問題の所在(論点)
わいせつ行為を終了し、犯意を喪失した後に、逃走の目的で加えられた暴行によって傷害が生じた場合、強制わいせつ致傷罪(刑法181条)が成立するか。
規範
刑法181条の強制わいせつ致傷罪(現在の不同意わいせつ致死傷罪に相当)が成立するためには、致傷の結果をもたらした暴行が、わいせつ行為の手段として行われた場合に限られず、わいせつ行為に随伴して行われたものであれば足りる。わいせつ行為の意思を喪失した後の暴行であっても、当該行為に随伴するものと認められる場合には、同罪の成立を肯定すべきである。
重要事実
被告人は深夜、被害者宅に侵入し、熟睡中の被害者の心神喪失に乗じて陰部を触るわいせつな行為(準強制わいせつ罪)に及んだ。これに気付き覚醒した被害者が、強い口調で被告人を問いただし、被告人のTシャツを掴んだ。被告人はその場から逃走するため、被害者を引きずったり上半身を激しくひねるなどの暴行を加え、被害者に右中指挫創等の傷害を負わせた。
あてはめ
被告人の暴行は、被害者が覚醒して被告人を問い詰め、衣服を掴むなどしたことにより、わいせつ行為の意思を喪失した後に行われたものである。しかし、この暴行は先行する準強制わいせつ行為の直後に、その場からの逃走を目的として行われたものであり、時空的・状況的密接性が認められる。したがって、当該暴行は「準強制わいせつ行為に随伴するもの」と評価できる。
結論
被告人の暴行により生じた被害者の傷害について、強制わいせつ致傷罪が成立する。
実務上の射程
強盗致傷罪における「機会」の法理と同様に、わいせつ行為そのものの手段たる暴行に限らず、密接に関連する行為(逃走等)から生じた結果も含むことを示した。答案上は、先行行為との時間的・場所的近接性や、先行行為によって生じた窮状(被害者による抵抗等)との関連性から「随伴性」を論証する際に活用する。
事件番号: 昭和22(れ)8 / 裁判年月日: 昭和22年12月15日 / 結論: 棄却
原判決においては、被告人が逃げるかけておるとき後から首を捕えられたので手で拂いのけたことの供述を證據として掲げておる。これによつて、暴行の意思を認定したのは、肯定し得るところである。論旨は傷害の犯意は認められぬと主張するが、暴行の意思あつて暴行を加へ傷害の結果を生じた以上、たとえ傷害の意思なき場合と雖も、傷害罪は成立す…
事件番号: 平成19(あ)1580 / 裁判年月日: 平成21年6月30日 / 結論: 棄却
共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀した被告人が,共犯者の一部が住居に侵入した後強盗に着手する前に,見張り役の共犯者において住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく,待機していた現場から上記見…