傷害の同時犯として起訴されたものを共同正犯と認定しても、それによつて被告人に不当な不意打を加え、その防禦権の行使に実質的な不利益を与えるおそれのないかぎり訴因変更の手続を必要としないものと解するのが相当である。
傷害の同時犯の起訴を共同正犯と認定する場合と訴因変更手続の要否。
刑訴法312条,刑法207条,刑法204条,刑法60条
判旨
傷害の同時犯(刑法207条)として起訴された事案において、裁判所が訴因変更手続を経ずに共同正犯と認定することは、被告人の防御権を実質的に害するおそれがない限り許される。
問題の所在(論点)
傷害の同時犯として起訴された事実を、訴因変更手続を経ずに共同正犯として認定することは、被告人の防御権を侵害し、訴訟法上違法となるか。
規範
訴因変更(刑事訴訟法312条1項)の要否は、審判対象の画定に不可欠な事項に変動があるか、あるいは被告人の防御に実質的な不利益を及ぼすか否かによって決せられる。特に、態様の差異が被告人に不当な不意打ちを与え、その防御権の行使に実質的な不利益を与えるおそれがない場合には、訴因変更手続は不要である。
重要事実
被告人は傷害の同時犯(刑法207条)として起訴された。しかし、裁判所は審理の結果、被告人を他の者との共同正犯(刑法60条)であると認定し、訴因変更手続を経ることなく有罪判決を言い渡した。これに対し、弁護人が判例違反および訴訟法違反を理由として上告した事案である。
あてはめ
傷害の同時犯と共同正犯は、いずれも特定の機会における暴行・傷害の事実を対象とするものである。同時犯として起訴された場合であっても、被告人は自らの暴行の有無や因果関係について防御を尽くすことが期待されており、共同正犯として認定されることが直ちに予期せぬ不意打ちになるとは限らない。本件のような場合には、同時犯を共同正犯と認定しても、被告人に不当な不意打ちを加え、その防御権の行使に実質的な不利益を与えるおそれはないと解される。
結論
傷害の同時犯から共同正犯への認定変更は、被告人の防御権に実質的な不利益を与えない限り、訴因変更手続を必要としない。
実務上の射程
同時犯(207条)の適用は、挙証責任を転換する特例的規定であるため、共謀が認められるのであれば共同正犯(60条)として処断することが優先される。実務上、両者は事実関係において密接しており、共謀の有無という点に防御の焦点が移るとしても、直ちに実質的不利益とはならないとする判断枠組みを示すものである。
事件番号: 昭和26(あ)3644 / 裁判年月日: 昭和28年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪の共同正犯について、起訴状記載の訴因を解釈し、審理の結果に基づき共同正犯の成立を認めた原審の判断を維持したものである。 第1 事案の概要:被告人らは、住居侵入の事実により起訴された。第一審判決は、起訴状に記載された訴因を解釈し、被告人らを住居侵入の共同正犯と認める事実を認定した。原審もこ…
事件番号: 平成24(あ)23 / 裁判年月日: 平成24年11月6日 / 結論: 棄却
他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴…