判旨
複数の者が揉み合いをしている際、その行為によって他者に傷害を負わせた場合、被害者自らの行為による負傷でない限り、当該行為者らに傷害罪の責任が認められる。
問題の所在(論点)
揉み合い(押合)の最中に生じた負傷について、被告人らの行為と傷害結果との間に因果関係を認めることができるか。特に、被害者自らの行為による負傷(自己負傷)である可能性が否定されるべきか。
規範
傷害罪(刑法204条)における実行行為および因果関係の判断において、複数人による「押合」という一連の暴行過程から生じた傷害は、それが被害者自身の行為によって生じたものと認められない限り、当該押合に関与した者の行為に帰せられる。
重要事実
被告人らは、被害者ら(AおよびB)と揉み合い(押合)になり、その最中にAに対して左小指等に全治約1週間の切創を、Bに対して右前膊等に全治約10日間の切創を負わせた。弁護人は、これらの負傷は被害者が自己の行為によって負傷したものであると主張して上告した。
あてはめ
原判決の認定によれば、被告人らは被害者らとの揉み合いの中で切創を負わせたとされており、被害者が自己の行為によって負傷したという事実は認められない。記録に照らしても、この認定が経験則に反するとは言えず、被告人らの一連の行為から傷害結果が発生したという因果関係の認定は正当であると評価される。
結論
被告人らによる傷害罪の成立を認めた原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は非常に簡潔であるが、複数人の揉み合い事案において、客観的な負傷事実が被告人らの行為に起因すると認定される限り、傷害罪の責任を問い得ることを示している。実務上は、実行行為の特定や因果関係の成否が争点となる場面で、事実認定の合理性を支える材料として機能する。
事件番号: 昭和25(あ)3235 / 裁判年月日: 昭和26年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗傷人罪は結果的加重犯であるため、強盗の実行行為中に共犯者の一人が被害者に傷害を負わせた場合、共犯者間に傷害の意思連絡や予見がなくても、共犯者全員に同罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、強盗を共謀し、凶器を携えて被害者D宅に押し入った。強盗の実行行為中、隙を見て屋外に逃げ出した…
事件番号: 昭和26(れ)703 / 裁判年月日: 昭和26年7月5日 / 結論: 棄却
強盗傷人罪が成立するには、強盗の機会に傷害の結果を発生せしめるを以て足りるものであつて、必ずしも強盗の手段である暴行又は脅迫により人を傷害し、又は傷害の意思を必要とするものではない。