判旨
判決書に掲げられた証拠が、被告人の公判供述のうち特定の事実について「記憶がない」旨を含むものである場合、当該証拠は、記憶がないとされた事実を除外したその他の犯罪事実の証拠として挙示されたものと解すべきである。
問題の所在(論点)
判決書に「被告人の当公廷における供述」が証拠として掲げられている場合、公判調書上、被告人が一部の事実を否定または記憶がないと述べている際、証拠の挙示として適法といえるか。証拠の対象範囲の解釈が問題となる。
規範
判決書において「被告人の当公廷における供述」を証拠として掲げる場合、その証拠能力および証明力の範囲は、公判調書の記載内容に基づき、合理的かつ限定的に解釈されるべきである。すなわち、被告人が一部の犯罪事実について記憶がない旨を述べている場合、特段の事情がない限り、その部分は証拠から除外され、自白が成立している他の事実に限定して証拠供用されたものと解する。
重要事実
被告人は複数の犯罪事実により起訴された。第一審判決は、証拠として「被告人の当公廷における供述」を掲げたが、公判調書によれば、被告人は公訴事実のうち特定の事実(第四の(2)(3)に該当するもの)については「記憶がない」と供述し、それ以外の事実は認めていた。弁護人は、記憶がないとしている事実についても被告人の供述を証拠としたことは判例違反であるとして上告した。
あてはめ
本件の第一審公判調書を確認すると、被告人は公訴事実中の大部分を認めているものの、一部の事実については明確に「記憶がない」と述べている。判決が証拠として「被告人の供述」を掲げたのは、その文言の全般的な記載にかかわらず、実質的には被告人が認めた「その他の各犯罪事実」に限定して証拠としたものと評価できる。したがって、記憶がないと述べた部分についてまで被告人の供述を証拠として採用したという事実は認められず、判決の論理に齟齬はない。
結論
被告人の公判供述を証拠として掲げた判決は、被告人が記憶がないと述べた事実を除外した範囲で証拠供用したものと解されるため、適法である。
実務上の射程
判決書の証拠の標目において、包括的に「被告人の公判供述」と記載されていても、公判調書の内容と照らし合わせ、合理的に限定解釈することで判決の正当性を維持する実務上の運用を認めたものである。答案上は、理由不備や証拠法則違反を検討する際に、判決文の文言のみならず公判調書との整合性を重視する基準として活用できる。
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