判旨
被告人が他人の身代わりに自首した事実が認められない以上、身代わりを強要されたとする憲法違反の主張は前提を欠き、証拠調べの範囲は事実審の裁量に属する。
問題の所在(論点)
刑罰法規の適用において、他人の身代わりを強要されたという主張が事実として認められない場合に憲法違反の主張が成立するか。また、証拠調べの範囲を決定する裁判所の権限の性質が問題となる。
規範
第一審裁判所がどの範囲で、どの程度の限度まで証拠調べを行うかは、裁判所の裁量に属する事項である。また、上告審において憲法違反を主張する場合、その前提となる事実が原審により合理的に否定されているときは、その主張は失当である。
重要事実
被告人が「A」という人物の身代わりとして犯罪を認めるよう強要されたと主張し、身代わり自首の事実を前提に憲法違反等を訴えて上告した事案。しかし、原審は記録を検討した結果、被告人が身代わりを強要された事実は到底措信できないと判断していた。
あてはめ
原審において被告人が身代わりを強要された事実は否定されており、この判断は記録に照らし正当である。したがって、強要を前提とした憲法違反の論旨は、その立論の根拠を欠くものといえる。また、第一審における証拠調べの範囲や限度に関する不服は、裁判所の裁量権の行使を非難するものにすぎず、適法な上告理由(刑訴法405条)には該当しない。
結論
被告人が身代わりを強要された事実は認められないため、憲法違反の主張は採用できず、証拠調べの範囲に関する不服も適法な上告理由に当たらないとして、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、証拠調べの必要性や範囲は裁判所の広範な裁量に委ねられていることを示す。また、上告審で憲法違反を主張する際には、原審が認定した事実を前提としなければならず、事実誤認の主張を憲法違反の衣で包んでも採用されないという限界を確認する際に応用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1741 / 裁判年月日: 昭和30年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述調書が取調官の強要や誘導により作成された事案において、客観的記録上にその事実を認めるに足りる証跡が存在しない場合には、自白の任意性を否定する余地はなく、違憲の主張はその前提を欠くものとして退けられる。 第1 事案の概要:被告人が、司法警察員に対する各供述調書について、取調官の強要および誘導によ…
事件番号: 昭和41(あ)574 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の抑留・拘禁が不当に長いものではなく、自白の任意性を疑うべき証跡が認められない場合には、憲法38条に違反する不当な自白とはいえず、その証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人が自白をした事案において、弁護人が憲法38条を根拠に、被告人の抑留および拘禁が不当に長いものであるとして、そ…