判旨
不法監禁罪における「監禁」とは、必ずしも一定の区画内に閉じ込めることを要せず、被害者の身辺を監視して脱出を困難にすることによって、身体の自由を拘束すれば足りる。
問題の所在(論点)
刑法220条の「監禁」の成立において、特定の室内に閉じ込める等の物理的封鎖がない場合であっても、身辺監視により脱出を困難にすれば足りるか。
規範
刑法220条にいう「監禁」とは、人が一定の区域から脱出することを不可能又は著しく困難にすることにより、身体の移動の自由を奪うことをいう。物理的な障壁による閉鎖空間への閉じ込めに限らず、被害者の身辺又は周辺を監視し、心理的又は事実上の圧力によって脱出を困難にする行為もこれに含まれる。
重要事実
被告人らは、被害者Aをいわゆる「つるし上げ」にした際、終始その身辺または周辺にあって同人を監視し続けた。それにより、被害者Aがその場から脱出することを困難な状態に置いた。
あてはめ
被告人らは被害者Aの身辺を絶えず監視しており、被害者の行動を心理的・事実上に制約している。このような監視行為は、被害者が自立的にその場を離脱することを困難にするものであるから、身体の自由を拘束する「監禁」に該当すると評価できる。
結論
被告人らにおいて、被害者の身辺を監視し脱出を困難にした以上、不法監禁罪が成立する。
実務上の射程
物理的な施錠や壁がなくとも、多人数で取り囲む「つるし上げ」等の状況下で、心理的・事実上の強制力により移動の自由を奪えば監禁罪が成立することを確認した判例である。答案上は、監禁の方法に限定がないことを示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1001 / 裁判年月日: 昭和30年9月29日 / 結論: 棄却
被告人が路上において某に対し「自動車に乗れ、乗らなかつたら殴るぞ」と申し向けて脅迫し、手を引張る等してこれを強いて自動車に乗せ、被告人等も同乗し、某が降車を求めたが肯ぜず、空ビール瓶を振り上げ「バタバタするとこれで殴るぞ」と某を脅迫し、自動車を疾送させた所為は、不法逮捕監禁罪に当る。