鉱山会社の人員整理に伴う企業整備反対闘争を有利に展開するため、同会社の労働組合員である被告人らが、執務中の同会社文珠坑坑長および同坑労務係長をその各自室から約七百米または約百米離れた角力場まで連行し、爾後約三時間の長きにわたり、組合員数百名と円陣を作つて取り囲み、その脱出を不能ならしめた上マイクをつき付けて執拗に人員解雇の根拠等の釈明を要求し、右坑長らを多衆の包囲と威圧下において、その自由を拘束する所為は、憲法第二八条の保障する団体行動権の行使にあたるものとはいえない。
憲法第二八条の保障する団体行動権の行使にあたらない事例。
刑法220条,憲法28条,労働組合法1条
判旨
労働組合法1条2項による刑事罰の免責は、同条1項の目的達成のためにした正当な行為に限定され、使用者の自由意思を不当に抑圧する暴行・脅迫を伴う行為には適用されない。多衆の威圧により会社役員を拘束・監禁する行為は、争議行為としての正当性の範囲を逸脱し、刑法上の逮捕・監禁罪を構成する。
問題の所在(論点)
労働組合員による人員整理反対闘争の一環として行われた、会社役員に対する強制的連行および多衆による包囲・監禁行為が、労働組合法1条2項にいう「正当な行為」として刑事罰を免れるか(刑事免責の限界)。
規範
憲法28条が保障する団体行動権等の権利行使も無制限ではなく、国民の平等権、自由権、財産権等の基本的人権に優位するものではない。同盟罷業の本質は労務供給の不履行にあり、使用者側の業務遂行に対し暴行・脅迫をもって妨害する行為は正当な争議行為とは認められない。労働組合法1条2項による刑法35条の適用(刑事免責)は、同条1項の目的達成のためにした「正当な行為」に限られ、暴行罪や脅迫罪、あるいはこれに類する自由を拘束する行為にまで及ぶものではない。
重要事実
鉱山会社の人員整理に反対する労働組合員である被告人らは、執務中の坑長および労務係長を、各人の居室から角力場まで強いて連行した。その後、約3時間にわたり組合員数百名で円陣を作って取り囲み、脱出不能な状態に置いた。その上でマイクを突きつけて執拗に解雇の根拠等の釈明を要求し、多衆の包囲と威圧の下で両名の自由を拘束し、逮捕・監禁するに至った。
あてはめ
被告人らの行為は、単なる労務提供の拒絶という同盟罷業の本質を逸脱し、物理的な力を用いて使用者の自由意思を抑圧するものである。具体的には、数百名という多衆の威力を用いて被害者らを連行・包囲し、3時間もの長きにわたって身体の自由を拘束しており、これは刑法上の逮捕・監禁罪に該当する。かかる態様の行為は、労働組合法1条1項の目的達成のために許容される正当な手段・方法とは認められず、刑法35条による違法性阻却の対象外であると評価される。
結論
被告人らの行為は正当な争議行為とは認められず、逮捕・監禁罪の成立を認めた原判決は妥当である。上告棄却。
実務上の射程
労働基本権の行使であっても、他者の基本的人権(身体の自由、意思決定の自由)を侵害する暴力的な態様を含む場合は刑事免責されないという原則(暴力行使の非限定的禁止)を示す。団体交渉の限界や争議行為の正当性の判断において、手段・方法の正当性を否定する際のリーディングケースとして活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)1649 / 裁判年月日: 昭和34年4月28日 / 結論: 棄却
スト支援者が会社の構内において争議中の労組員ら六、七〇名と共謀し、たまたま五・三〇記念大会視察中の巡査部長を取り囲み、多衆の威力を背景にして身体または自由に対し危害を加えかねまじき気勢を示して脅迫を続け、取り上げた警察手帳を読み上げたりした上強要して詫状を書かせ、これを参集者に向つて読み上げさせた後、強いてデモ隊の中央…