被告人等が組合員等大衆とともにA課長等の周囲にスクラムを組み交互に右大衆を指揮して、スクラムを組んでいるものを交替させたり、労働歌を高唱させたり、”ワツショ、ワツショ”と掛声をかけて同課長等の周囲を駈け廻らせたり、或は自らスクラムに参加したりして、気勢をあふり、約二時間五十分にわたり多衆の包囲と威圧により前記課長等の脱出を不能ならしめた事実関係の下においては、被告人等の所為が労働組合法一条一項の目的達成のためにする正当行為であると認めることはできない。
労働組合法第一条第一項の目的達成のための正当行為と認められない事例
労働組合法1条1項,憲法28条
判旨
労働組合法1条2項の刑法適用除外を受ける正当行為といえるためには、同条1項の目的達成のためにされる正当な行為であることが必要である。原判決が、被告人らの所為を同項の目的達成のための正当行為に当たらないとして刑事責任を認めた判断は正当である。
問題の所在(論点)
労働組合等の行為について、労働組合法1条2項(刑事免責)を適用し、刑法等の罰則の適用を除外するための要件(正当性の判断枠組み)は何か。
規範
労働組合法1条2項(現1条2項)による刑事免責が認められるためには、当該行為が同条1項に掲げる目的(労働者が交渉において使用者と対等の立場に立つこと、労働条件の維持改善等)を達成するために行われる「正当な行為」であることが必要である。正当性の判断に際しては、行為の態様、手段、目的の正当性が総合的に考慮されるべきである。
重要事実
本件は、被告人らの行為が労働組合法上の正当な争議行為等に該当するか、あるいは刑事罰を免れない違法な行為であるかが争われた事件である。第一審および原審(控訴審)は、被告人らが行った具体的な所為について、労働組合法1条1項が定める目的達成のための正当な行為とは認められないと判断し、有罪判決を下した(具体的な事実関係の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
原審が確定した事実関係に基づけば、被告人らの行った行為は、労働組合法1条1項が予定する労働条件の維持改善や団体交渉の促進といった目的を達成するために必要な、社会通念上相当な範囲の正当行為であるとは認められない。したがって、刑法上の違法性が阻却される根拠となる同法1条2項を適用する余地はなく、被告人らに対して刑事責任を肯定した原判決の判断は正当であるといえる。
結論
被告人らの行為は労働組合法上の正当行為に当たらないため、同法1条2項による刑事免責は認められず、有罪とするのが相当である。
実務上の射程
労働基本権に基づく刑事免責の限界を示した判決。司法試験においては、ストライキやビラ貼り、ピケッティング等の争議行為の正当性を論じる際、憲法28条および労組法1条2項の適用要件として、目的と手段の両面から正当性を検討する際の基礎的な判断枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和31(あ)685 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
鉱山会社の人員整理に伴う企業整備反対闘争を有利に展開するため、同会社の労働組合員である被告人らが、執務中の同会社文珠坑坑長および同坑労務係長をその各自室から約七百米または約百米離れた角力場まで連行し、爾後約三時間の長きにわたり、組合員数百名と円陣を作つて取り囲み、その脱出を不能ならしめた上マイクをつき付けて執拗に人員解…