鉱山会社の企業整備に伴う人員解雇の撤回要求貫徹のため、同会社の労働組合執行委員たる被告人が、執務中の同会社鉱務課長を強いて会社事務所外の組合本部前広場まで連行した上爾後約三時間四〇分の長きに亘り、組合員数百名と円陣を作つて取り囲み、その脱出を不能ならしめた上マイクを突きつけて解雇反対に協力方を執拗に迫り或は組合員大衆のデモ隊の先頭に立たせて数百米の間を強いて駈足行進させる等、もつて同課長を多衆の包囲と威圧下において、その自由を拘束し、業務を妨害したという事実関係の下においては、被告人の所為が労働組合法第一条第一項の目的を達成するためにした正当な行為であると認めることができない。
労働組合法第一条第一項の目的達成のための正当行為と認められない事例
憲法28条,労働組合法1条,刑法220条,刑法234条
判旨
労働組合法1条2項が定める刑法適用除外の範囲は、同法1条1項の目的を達成するためにした「正当な行為」に限られる。本件被告人の行為は、原審が確定した事実関係に基づけば当該目的達成のための正当な行為とは認められず、刑事免責の対象とならない。
問題の所在(論点)
労働組合法1条2項が規定する刑事免責(正当な行為の刑法適用除外)の成否が、いかなる基準によって判断されるべきか。
規範
労働組合法1条2項による刑事免責が認められるためには、当該行為が同法1条1項に規定する「労働者が……労働条件について交渉するために、自ら組織し、且つ、運営する団体(労働組合)の……目的」を達成するために行われた「正当な行為」であることを要する。
重要事実
判決文からは具体的な犯行態様等の詳細は不明であるが、被告人の所為について、労働組合法上の正当な争議行為または組合活動に該当するかが争われた事案である。第一審判決は、被告人の行為に対し労働組合法1条2項を適用せず、有罪とした。これに対し弁護人が法令違反等を理由に控訴・上告した。
あてはめ
原審が適法に確定した事実関係によれば、被告人の所為は労働組合法1条1項の目的を達成するためにした正当な行為の範疇を逸脱していると認められる。したがって、同法1条2項の適用要件を欠くとした第一審および原審の判断は相当であり、法令違反は認められない。
結論
被告人の行為は正当な行為とは認められず、労働組合法1条2項の適用は否定される。上告棄却。
実務上の射程
労働組合法1条2項の免責が及ぶ範囲は「正当な行為」に限定されることを確認した初期の判例である。答案上は、争議行為等の刑事免責を論ずる際、同法1条1項の目的に照らした「正当性」の要件を導く根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1981 / 裁判年月日: 昭和24年12月22日 / 結論: 棄却
原判決は、相手方が單に監禁の状態にあつたが故に昭和二〇年法律第五一號勞働組合法第一條第一項の適用の余地がないと判斷したものではなく諸般の事情を審理檢討した上、本件不法監禁行爲は、勞働爭議中に發生したことではあるが、爭議行爲自体に随伴して生じたものではなく、従つてその違法性を阻却するか否かについては、爭議行爲自体の正當性…
事件番号: 昭和26(あ)1165 / 裁判年月日: 昭和28年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項による刑事免責の範囲は、同条1項の目的達成のためにされた正当な行為に限定され、暴行や脅迫、監禁等の刑罰法規に触れる行為には及ばない。 第1 事案の概要:被告人等は、労働争議の過程において、使用者側に対し逮捕、監禁、公務執行妨害等の行為に及んだ。被告人側は、これらの行為が憲法28条…