判旨
入札の公正を害する目的で入札金額を協定し、特定の業者に落札させる行為は、刑法96条の3第1項(当時の競売入札妨害罪)にいう「不正の利益」を得る目的に該当する。また、労働組合としての形式を伴う活動であっても、その実質が違法な入札操作である場合には、労働組合法1条2項による正当行為としての違法性阻却は認められない。
問題の所在(論点)
1. 入札金額を協定し特定の業者を当選させる行為に「不正の利益」を得る目的が認められるか。2. 本件の行為が労働組合法1条2項の正当行為として違法性が阻却されるか。
規範
刑法上の競売入札妨害罪における「不正の利益」を得る目的とは、入札の公正を害し、特定の者に有利な結果をもたらす主観的意図を指す。また、労働組合法1条2項の正当行為として違法性が阻却されるためには、当該行為が労働組合の目的達成のために必要かつ社会通念上相当な範囲内で行われることを要する。
重要事実
被告人らは、建設工事の入札において、特定の建設会社(A建設)に落札させることを画策した。その際、あらかじめ入札金額および再入札金額を協定し、他の入札参加者にはその協定金額よりも高額で入札させることを決定した。被告人側は、これらの行為が労働組合法1条2項の正当な活動に該当し、違法性が阻却されると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件において、被告人らは特定の業者に落札させるために入札金額を協定し、他の入札者にそれより高い金額を書かせている。これは入札の自由な競争を形骸化させるものであり、判例の趣旨に照らし「不正の利益」を得る目的があったと評価される。2. 被告人らの所為は、その具体的な事実関係(入札操作)に照らせば、労働組合法が保護する正当な団体交渉や組合活動の範囲を逸脱しており、同法1条2項の適用によって違法性が阻却されるものとは解されない。
結論
被告人らの行為は競売入札妨害罪の構成要件を充足し、かつ労働組合法上の正当行為にも該当しないため、有罪とする原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、談合行為における「不正の利益」の目的を広く認める実務を補強するものである。答案上は、入札操作がなされた事実から直ちに不正の利益目的を導く論拠として活用できる。また、労働組合の看板を掲げていても、行為の態様が刑罰法規に抵触し、かつ組合活動としての相当性を欠く場合には、違法性阻却を認めない判断基準として機能する。
事件番号: 昭和31(あ)686 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
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