一 工事の請負入札につき初めから自由競争を避けるため落札者および落札価格を協定し、協定により定めた者が落札者となつた場合は、その者は落札価格の三パーセントの談合金を提供し、その金の一部をもつて落札者を含めた入札指名者間の飲食費にあて、残金は入札指名者間で分配することを知悉しながら、入札に際し、かかる協定をして入札、落札し、談合金合計三〇万五三〇〇円を費消、分配したときは、その落札価格は、入札施行者に対し、少くともその三パーセントが公正な自由競争によつて形成されたであろう価格よりも不利益な価格であると推認される。 二 談合金が落札金額の約三パーセントで(合計三〇万五三〇〇円)その金額、分配の方法からして社会常識上儀礼的なものその他正当のものと認められないときは、かかる金員の授受を目的とする談合は「不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シタル」ものにあたる。
一 談合が「公正ナル価格ヲ害」すると認められる事例 二 「不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シ」た場合にあたる事例
刑法96条ノ3第2項,刑法96条ノ32項
判旨
刑法96条の3第2項の公契約関係競売入札妨害罪(旧談合罪)に関し、自由競争を避けるため特定の落札者と価格を協定することは、入札の機能を失わせ「公正な価格を害する目的」及び「不正の利益を得る目的」を充足すると判示した。
問題の所在(論点)
入札指名者が事前に落札者と価格を協定し、落札価格の一部を分配する行為が、刑法96条の3第2項(当時)の「公正な価格を害する目的」及び「不正の利益を得る目的」に該当するか。
規範
「公正な価格を害する目的」とは、自由な競争がなされたならば形成されたであろう価格よりも不利益な価格で契約を締結させる目的をいう。また、落札価格の一定割合を談合金として分配する行為は、その金額や分配方法が社会通念上の礼儀等の範囲を超え正当と認められない場合、「不正の利益を得る目的」に該当する。
重要事実
被告人らは、富山県施行の工事入札において自由競争を避けるため、あらかじめ落札者と落札価格を協定した。さらに、落札者が落札価格の約3パーセントを「談合金」として提供し、その一部を飲食費に充て、残金を指名業者間で分配することを合意した上で入札を行い、実際に合計30万5300円を費消・分配した。
あてはめ
まず、初めから自由競争を排除する意思で落札者と価格を協定することは、競争入札の機能を根本から損なうものである。本件の落札価格は、少なくとも談合金として分配された3パーセント分について、公正な自由競争によって形成されたであろう価格よりも入札施行者に不利益な価格であると推認される。次に、落札価格の約3パーセントという談合金の金額および分配方法は、社会常識上の儀礼の範囲を逸脱しており、正当なものとは認められない。したがって、被告人らには不正な利益を得る目的があったと解される。
結論
被告人らの行為は、公正な価格を害し、かつ不正の利益を得る目的をもって行われた談合に該当し、公契約関係競売入札妨害罪が成立する。
実務上の射程
本判決は旧法下の「談合罪」に関するものだが、現行刑法96条の6第2項の「公正な価格を害し、又は不正の利益を得る目的」の解釈においても、自由競争による形成価格との比較や、談合金の社会通念上の許容性という判断枠組みは依然として重要である。
事件番号: 昭和29(あ)479 / 裁判年月日: 昭和32年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法96条の3第2項後段(当時)の競売入札妨害罪における「不正ノ利益」とは、入札の公正を害する目的で授受される利益を指し、必ずしも適正価格(実費に利潤を加算した額)を害する場合に限定されない。 第1 事案の概要:公の工事の指名競争入札において、指名入札人の一人であった被告人は、特定の落札希望者から…