日本共産党員たる被告人が、ほか二名と共謀の上、当時同じく日本共産党員であつた某平和病院の炊事婦をしていた某女(当時二三年)を、日本共産党に対するスパイ活動容疑により弾劾査問しようと企て、そのため、某年三月一〇日午前〇時頃より同月一四日午前一一時頃までの間、某人方物置に留め置き、その間同女が同所から脱出することを防止するため、自ら、若しくは他の婦女五名の監視人をおいて、間断なく同女を監視し、因つて同女をして同所から脱出することを不可能ならしめた場合には、刑法第二二〇条第一項の不法監禁罪が成立する。
刑法第二二〇条第一項の監禁罪が成立する事例。
刑法220条1項
判旨
刑法220条の監禁罪が成立するためには、必ずしも一定の区画内に閉じ込める必要はなく、身体の自由を拘束してその場所からの脱出を著しく困難にすれば足りる。また、被害者が就寝中などの理由で一時的に自由を制限されている認識がない状態であっても、客観的に自由が奪われていれば本罪が成立し得る。
問題の所在(論点)
一定の区域から脱出を困難にする「監禁」の成立に際し、被害者がその拘束を現実に認識している必要があるか。また、具体的な拘束態様が監禁罪を構成するか(刑法220条の「監禁」の意義)。
規範
刑法220条にいう「監禁」とは、人の身体を一定の区域内に拘束して、その場所から脱出することを困難にすることをいう。本罪の保護法益は、身体の自由という客観的な法益であり、必ずしも被害者が現実に自由の制限を認識していること(認識の有無)は成立を左右しない。
重要事実
被告人が、被害者を一定の場所(具体的な場所や手段は判決文からは不明)に留まらせ、その身体的自由を奪った事案。被告人側は監禁罪の構成要件に該当しない(事実誤認)と主張して上告した。
あてはめ
原審が認定した事実関係によれば、被告人の行為は被害者の身体的自由を実質的に奪い、その場所からの脱出を困難にさせたものといえる。たとえ一時的に被害者が拘束を意識できない状況にあったとしても、客観的に見て身体の自由が剥奪されている以上、監禁罪の構成要件を充足すると判断される。
結論
本件行為が監禁罪を構成するとした原判断は正当であり、被告人を監禁罪に問うことができる。
実務上の射程
監禁罪における「潜在的自由」の保護を認めた判例として重要である。答案上は、幼児や泥酔者、就寝中の者を対象とした場合でも、客観的に脱出が困難な状態に置けば監禁罪が成立するという論理の根拠として用いる。
事件番号: 昭和28(あ)2751 / 裁判年月日: 昭和30年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法監禁罪における「監禁」とは、必ずしも一定の区画内に閉じ込めることを要せず、被害者の身辺を監視して脱出を困難にすることによって、身体の自由を拘束すれば足りる。 第1 事案の概要:被告人らは、被害者Aをいわゆる「つるし上げ」にした際、終始その身辺または周辺にあって同人を監視し続けた。それにより、被…