本件のように仕込の時期と場所とを異にするような酒類製造はこれを併合罪と見るべきものである(昭和二七年(あ)四九七五号同二八年四月二一日第三小法廷決定)。またその譲渡行為は仮に日時が近接し、相手方が同一であるからといつて常に包括一罪になるわけではない。なお右の論旨は控訴審の主張、判断を受けていないものであつて、すべて上告適法の理由にならない。
一 仕込の時期と場所を異にする酒類製造行為の罪数 二 日時が近接し、相手方が同一である譲渡行為の罪数
酒税法60条,酒税法62条,刑法45条
判旨
酒類製造の罪において、仕込みの時期および場所を異にする製造行為は、刑法45条の併合罪と解するのが相当である。また、酒類の譲渡行為についても、日時が近接し相手方が同一であるからといって、当然に包括一罪になるわけではない。
問題の所在(論点)
時期や場所を異にする複数の酒類製造行為、および日時が近接し相手方が同一である複数の酒類譲渡行為の罪数関係(刑法45条の併合罪か、あるいは包括一罪か)。
規範
犯罪の個数は、原則として構成要件的行為の回数によって決せられる。酒類製造罪においては、製造プロセスの独立性(時期・場所の異同)に着目し、各製造行為が別個の構成要件的評価を受ける場合には併合罪(刑法45条)となる。また、譲渡行為についても、取引の個別性や時間的・場所的間隔に照らし、各行為の独立性が認められる場合には、単一の包括的な意思に基づく一連の行為とはいえず、併合罪として扱うべきである。
重要事実
被告人が、酒税法違反に問われた事案。具体的には、時期および場所を異にして酒類の仕込み(製造行為)を行い、さらにそれらを譲渡した。弁護人は、これらの一連の行為が包括一罪(または連続犯的な一罪)として扱われるべきであり、併合罪とした原判決には罪数判断の誤り(憲法39条違反等)があると主張して上告した。
あてはめ
本件における酒類製造は、仕込みの時期および場所を異にしている。これは、各製造工程が時間的・空間的に独立した構成要件的活動であることを意味し、社会通念上も別個の犯罪行為と評価される。したがって、これらを包括して一個の罪と解することはできず、併合罪とみるのが相当である。また、譲渡行為についても、単に日時の近接性や相手方の同一性のみをもって直ちに包括一罪と解することはできない。個々の譲渡が独立した取引形態を有し、反復して行われたのであれば、それぞれが別個の罪を構成する。
結論
仕込みの時期・場所を異にする酒類製造行為、および個別の酒類譲渡行為は併合罪となる。本件上告を棄却する。
実務上の射程
数個の同種行為が包括一罪か併合罪かの区別において、行為の時期・場所の独立性が決定的な要素となることを示した。特に、行政取締法規(酒税法等)違反における罪数判断において、構成要件的行為の反復を安易に包括一罪とせず、原則通り併合罪として処理する実務上の指針となる。答案上は、行為の個数算定において「時期・場所・対象」の異同を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1340 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
原判決が法律適用の基礎とした第一審判決の認定によれば、被告人は(第一)昭和二四年九月二〇日頃焼酎を密造し、(第二)同月三〇日頃濁酒を密造したものである。このように密造した酒の種類も異なり、その仕込も別箇になされた場合には、たとえ所論のようにその行為の日時が近接していても、その行為は一箇でなく二箇と認めるのが相当である。…