判旨
酒類製造の目的で醪(もろみ)を製造した行為と、その後に焼酎を製造した行為は、時期や対象が別個のものである限り、一個の犯罪ではなく併合罪として処理される。
問題の所在(論点)
焼酎を製造する目的で、その原料となる醪を製造し、その後実際に焼酎を製造した場合において、これらの行為が一個の犯罪(包括一罪等)となるか、それとも別個の犯罪(併合罪)となるか。
規範
犯罪の個数は、行為の態様、時間的・場所的間隔、及び犯意の単一性等を総合的に考慮して判断される。一連の目的(焼酎製造)があったとしても、製造対象や製造時期が明確に区別される場合には、それぞれ独立した個別の犯罪を構成する。
重要事実
被告人は、昭和25年4月2日頃に醪6斗を製造し、同月10日頃にアルコール分21度の焼酎2斗7升を製造した(第一事実)。さらに、これとは別に、同年4月7日に焼酎醪約1石6斗5升を製造した(第二事実)。被告人側は、焼酎を作る目的で醪を作ったにすぎないから一個の犯罪行為であると主張した。
あてはめ
判示の第一事実(4月2日の醪製造と10日の焼酎製造)と第二事実(4月7日の醪製造)を比較すると、製造の対象物および製造時期がそれぞれ異なっている。被告人は一連の焼酎製造過程にあると主張するが、客観的な事実関係に照らせば、各行為は時間的に隔たりがあり、かつ対象となった醪や焼酎も別個独立したものである。したがって、これらは全然二個の事実であると認められる。
結論
被告人の行為は二個の犯罪を構成し、併合罪とした原判決の判断は適法である。
実務上の射程
本判決は、一連の目的(製造)がある場合でも、その工程や時期が分断されている場合の罪数判断の基準を示している。答案上は、一連の犯意に基づく継続的な行為か、それとも時間的・客観的に画された別個の行為かを区別する際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4975 / 裁判年月日: 昭和28年4月21日 / 結論: 棄却
第一審判決判示第二、第三の各所為はいわゆる仕込を行つた時期が異なり、それぞれ別個の原料の器具を使用しているのであるから各個の濁酒製造行為とみるべきであり、所論のように被告人が最初濁酒五斗を製造する意思であつたが、資材などの関係で二回に分けて仕込んだものとしてもこれを一個の行為とみるべきものではない。