被告人が旧酒税法(昭和二八年法律第六号による改正前のもの)施行当時、政府の免許を受けないで、焼酎製造の単一の意思をもつて、その過程として醪を造りその一部を同一日時場所において継続して二回に亘り蒸溜し焼酎の密造を遂げたが残部は蒸溜する前に発覚したという場合は、包括して一個の旧酒税法第六〇条第一項の罪と認めるべきである。
包括一罪と認められる焼酎密造の事例
酒税法(昭和28年法律6号による改正前のもの)60条1項
判旨
単一の酒類製造の意思に基づき、同一の場所・日時において、原料の仕込みから複数回に及ぶ蒸留を経て一部の製造を完了し、残部が未完了のまま発覚した事案は、包括して一個の酒税法違反罪(無免許製造)を構成する。
問題の所在(論点)
単一の製造目的の下で、一定量の原料から複数回にわけて行われた蒸留行為および製造未完了の工程が含まれる場合に、これらを併合罪(刑法45条)として扱うべきか、あるいは包括一罪として扱うべきか。
規範
単一の意思に基づき、同一の場所・日時において継続して行われた一連の製造行為は、その各工程(蒸留行為の回数)や進捗状況(既遂・未遂)にかかわらず、社会的・法的評価において独立した処罰の対象となるものではなく、包括して一個の罪を構成する。
重要事実
被告人は、政府の免許を受けずに焼酎を製造する目的で、昭和26年2月1日に居宅で醪(もろみ)一石一斗一升を造った。同月15日、居宅裏の小屋で二回にわたり右醪の一部を蒸留して焼酎五斗八升を製造したが、残りの醪を蒸留する前の同月17日に犯行が発覚した。
あてはめ
被告人は、焼酎製造の「単一の意思」を有しており、その実行過程として醪を造り、同一の場所・日時において「継続して二回にわたり」蒸留を行っている。この一連の行為は、焼酎の密造という一つの目的を達するための時間的・場所的に密接した活動であり、各個の蒸留行為や残存醪の未蒸留状態をそれぞれ独立した既遂罪や未遂罪として分離すべきではない。したがって、これら全体を包括して一個の旧酒税法60条1項違反の罪と認めるのが相当である。
結論
被告人の所為は包括して一個の旧酒税法違反罪を構成し、併合罪とした原判決は法令の適用を誤った違法がある。被告人を罰金一万五千円に処する。
実務上の射程
罪数論における包括一罪の判断枠組みを示すものである。特に、同一の目的(単一の犯意)に基づき、近接した時間・場所で繰り返される同種の実行行為や、一連の製造工程の前後関係がある場合、それらを分断して併合罪とすべきではないという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和26(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和27年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】酒類製造の目的で醪(もろみ)を製造した行為と、その後に焼酎を製造した行為は、時期や対象が別個のものである限り、一個の犯罪ではなく併合罪として処理される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和25年4月2日頃に醪6斗を製造し、同月10日頃にアルコール分21度の焼酎2斗7升を製造した(第一事実)。さらに、…