原判決が法律適用の基礎とした第一審判決の認定によれば、被告人は(第一)昭和二四年九月二〇日頃焼酎を密造し、(第二)同月三〇日頃濁酒を密造したものである。このように密造した酒の種類も異なり、その仕込も別箇になされた場合には、たとえ所論のようにその行為の日時が近接していても、その行為は一箇でなく二箇と認めるのが相当である。従つて原判決がこれを二個の併合罪としたのは正当である。
行為の日時は近接するが種類、仕込を別異にする酒税法違反罪の罪数
刑法45条,酒税法60条,酒税法3条,酒税法66条
判旨
酒類の密造において、密造した酒の種類が異なり、かつその仕込みが別個になされた場合には、たとえ行為日時が近接していても、数個の行為として併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
数回の密造行為が、刑法上の一個の行為(一罪)と評価されるか、あるいは数個の行為(併合罪)と評価されるか。また、これらを併合罪として処罰することが憲法39条後段の二重処罰禁止に抵触するか。
規範
犯罪の個数は、行為の態様、目的、対象等の諸要素を総合して判断すべきであるが、密造罪においては、密造対象である酒の種類および製造工程(仕込み)の同一性・独立性に着目して判断される。
重要事実
被告人は、昭和24年9月20日頃に焼酎を密造し、さらに同月30日頃に濁酒を密造した。これらの行為は日時こそ近接していたものの、製造された酒の種類は異なり、それぞれの仕込み作業も別個の機会に行われていた。
あてはめ
本件では、第一に焼酎、第二に濁酒と、密造された対象(酒の種類)が明確に異なっている。また、それぞれの製造工程における「仕込み」が別個独立になされていることから、自然的・社会的な意味において単一の実行行為とは認められない。したがって、各行為は独立した別個の犯罪を構成し、併合罪(刑法45条前段)の関係にあると解される。一個の行為ではない以上、併合罪として処断しても憲法39条後段の違反には当たらない。
結論
被告人の行為は二罪の併合罪であり、これを一罪として扱わなかった原判決に憲法違反の違法はない。
実務上の射程
罪数論における「行為の個数」の判断基準を示す。特に継続犯や包括一罪が問題となる場面において、対象の差異や実行行為(工程)の独立性を根拠に併合罪と認定する際の論理構成として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和27年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】酒類製造の目的で醪(もろみ)を製造した行為と、その後に焼酎を製造した行為は、時期や対象が別個のものである限り、一個の犯罪ではなく併合罪として処理される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和25年4月2日頃に醪6斗を製造し、同月10日頃にアルコール分21度の焼酎2斗7升を製造した(第一事実)。さらに、…