所論は、原判示第一の(一)の焼酎製造は、第一の(二)の雑酒製造の目的をもつてなされたものであるから、第一の(二)の雑酒製造の一過程としてその事実に含まれ、包括一罪として処断されるべきであるのに、原審がこれを併合罪として処断したことは、同一犯罪に重ねて有罪の判決をしたものであり、憲法三九条に違反すると主張する。しかし、原判決は所論のように雑酒製造の目的をもつて焼酎を製造したものとは認定していないのであつて、これらの製造行為は、それぞれ別個の犯罪行為を組成し、併合罪の関係にあるものと判断したものであり、その判断は正当と認められる。
製造した焼酎のうち、その一部分を原料として雑酒を製造した場合の罪数
酒税法7条,酒税法54条,酒税法57条,刑法45条
判旨
酒類製造の事実関係において、ある酒類の製造行為が他の酒類製造の過程に含まれると認められない限り、それぞれの製造行為は別個の犯罪を構成し、併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
目的を同じくする複数の酒類製造行為がなされた場合に、それらが包括一罪となるか、あるいは別個の犯罪として併合罪(刑法45条)となるか。また、併合罪としての処断が二重処罰の禁止(憲法39条)に抵触するか。
規範
複数の酒類製造行為がなされた場合、一方の製造行為が他方の製造過程の一部を成すと評価できるなどの特段の事情がない限り、各行為は独立した構成要件的行為として別個の犯罪を組成し、刑法45条前段の併合罪として処断される。
重要事実
被告人は、焼酎の製造(第一の(一))および雑酒の製造(第一の(二))を行った。弁護人は、焼酎の製造は雑酒製造の目的で行われたものであり、雑酒製造の一過程に含まれる包括一罪であると主張して、併合罪とした原判決は憲法39条に違反すると訴えた。
あてはめ
本件において、原判決は焼酎製造が雑酒製造の目的で行われたという事実を認定していない。したがって、焼酎の製造と雑酒の製造は、一方が他方の不可欠な準備ないし過程としての関係にあるとはいえず、事実上も別個の犯罪行為を組成するものと解される。このように、独立した行為に基づき別個の罪が成立すると判断される以上、併合罪として処断することに法的な誤りはない。
結論
焼酎製造と雑酒製造はそれぞれ別個の犯罪を構成し、併合罪の関係にある。したがって、二重処罰を禁止する憲法39条には違反しない。
実務上の射程
罪数論において、複数の行為が目的・手段の関係にあるとして包括一罪を主張する際の反駁として有用である。特に、各行為が独立して各罰則の構成要件を充足し、かつ事実認定として一連の過程と認められない場合には、併合罪となることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和28(あ)4215 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】酒税法違反の罪が複数回にわたって行われた場合、それらが包括一罪を構成するか、あるいは併合罪(刑法45条前段)となるかが争点となり、本判決はこれを併合罪と解した原判決を正当とした。 第1 事案の概要:被告人は、判示第一の一から四までに示された通り、複数回にわたり酒税法に違反する行為を行った。弁護人は…