第一審判決判示第二、第三の各所為はいわゆる仕込を行つた時期が異なり、それぞれ別個の原料の器具を使用しているのであるから各個の濁酒製造行為とみるべきであり、所論のように被告人が最初濁酒五斗を製造する意思であつたが、資材などの関係で二回に分けて仕込んだものとしてもこれを一個の行為とみるべきものではない。
濁酒を製造するに仕込の時期が異なる時はその製造行為は別個か
酒税法60条,酒税法3条,酒税法66条,刑法45条
判旨
酒類の製造行為において、仕込みの時期が異なり、別個の原料および器具を使用している場合には、当初の製造意思が同一であっても、各行為は別個の罪を構成する。
問題の所在(論点)
時期を異にし、別個の原料・器具を用いて行われた複数の製造行為が、当初の同一の製造意思に基づいている場合に、刑法上の一個の行為と評価されるか、それとも別個の犯罪となるか。
規範
犯罪の個数は、行為の態様、使用された原料や器具の独立性、および実施された時期の近接性等に照らして判断される。当初から一定量を製造する包括的な意思があったとしても、客観的な実行行為が独立している場合には、一個の行為(包括一罪)とはならず、各個の製造行為として別罪を構成する。
重要事実
被告人は、酒税法に違反して濁酒を製造した。具体的には、いわゆる「仕込み」を行った時期が異なり、それぞれの製造過程において別個の原料と別個の器具を使用していた。被告人は、当初から合計五斗の濁酒を製造する意思を有していたが、資材等の関係で二回に分けて仕込みを行っていた。
あてはめ
本件では、被告人が二回にわけて仕込みを行っているが、各回において「別個の原料」と「別個の器具」が使用されている。このような客観的態様からすれば、各仕込みは物理的・時間的に独立した製造工程であるといえる。被告人は当初五斗を製造する意思であったと主張するが、主観的な意思の同一性のみをもって、客観的に分断された実行行為を一個の行為に括り出すことはできない。したがって、本件の各行為はそれぞれ独立した濁酒製造行為と評価される。
結論
本件の各製造行為は別個の罪を構成し、併合罪(酒税法上の特則適用を含む)として処断される。被告人の行為を一個の行為とみるべきではない。
実務上の射程
数個の実行行為が「包括一罪」となるか「併合罪」となるかの区別に関する基準を示す。主観的な犯意の単一性よりも、実行行為の客観的な独立性(時間、場所、方法、対象物)を重視する実務の基本的立場を裏付ける判例である。
事件番号: 昭和28(あ)2659 / 裁判年月日: 昭和29年12月21日 / 結論: 棄却
本件のように仕込の時期と場所とを異にするような酒類製造はこれを併合罪と見るべきものである(昭和二七年(あ)四九七五号同二八年四月二一日第三小法廷決定)。またその譲渡行為は仮に日時が近接し、相手方が同一であるからといつて常に包括一罪になるわけではない。なお右の論旨は控訴審の主張、判断を受けていないものであつて、すべて上告…