判旨
憲法21条が保障する表現の自由は絶対無制限なものではなく、刑法が犯罪として禁止している行為までをも保障するものではない。
問題の所在(論点)
刑法により犯罪として禁止されている行為について、憲法21条の表現の自由を根拠にその違憲・無罪を主張できるか。
規範
憲法21条の保障する表現の自由といえども、公共の福祉による制限を免れるものではない。したがって、刑法が犯罪として禁止している行為については、表現の自由の保障の範囲外であり、処罰することは合憲である。
重要事実
被告人は刑法上の犯罪に該当する行為(判決文からは具体的な罪名は不明)を行い、有罪判決を受けた。これに対し被告人は、当該行為は憲法21条によって保障される表現活動であるとして、有罪判決の違憲を主張して上告した。
あてはめ
憲法21条は無制限な自由を認めるものではない。本件において被告人が行った行為は、刑法により犯罪として禁止されているものである。このような行為は、憲法21条が保障する表現の自由の限界を超えたものであり、同条によって保護されるべき正当な表現活動には当たらないと解される。
結論
刑法が犯罪として禁止している行為を処罰することは、憲法21条に違反しない。
実務上の射程
表現の自由と公共の福祉(刑事罰)の関係を極めて簡潔に示した初期の判例である。現代の答案作成においては、より詳細な「公共の福祉」の具体的衡量(LRAの基準や二重の基準論等)が求められるが、表現の自由が絶対無制限ではないことを示す際の最小限の論拠として用いることができる。
事件番号: 昭和54(あ)937 / 裁判年月日: 昭和54年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所の判決理由において、表現の自由の制限に関する説示がなされたとしても、それが被告人の権利を侵害する意図でないことが明白であれば、憲法21条違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人4名が上告した事案において、原判決の説示が憲法21条に違反し被告人らの表現の自由を侵害するものであると主張して…
事件番号: 昭和27(あ)2037 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建造物侵入罪(刑法130条前段)の成否について、特定の政治的・社会的な事情があっても、当該行為を正当化することはできず、違法性が阻却されないことを示した。 第1 事案の概要:被告人らは、特定の政治的または社会的な目的(詳細は判決文からは不明)に基づき、本件建造物への侵入行為に及んだ。被告人側は、上…
事件番号: 昭和25(あ)3057 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表現の自由や団体行動権といえども公共の福祉による制限を受け、多衆の威力を用いて退去要求に応じず器物損壊や脅迫に至る行為は、憲法の保障の限界を逸脱し犯罪として処罰される。 第1 事案の概要:被告人らは、多衆を語らって税務署に押し掛けた。税務署長から再三にわたる退去要求を受けたにもかかわらずこれに応じ…