判旨
建造物侵入罪(刑法130条前段)の成否について、特定の政治的・社会的な事情があっても、当該行為を正当化することはできず、違法性が阻却されないことを示した。
問題の所在(論点)
特定の社会的事情や政治的目的を背景に行われた建造物への立ち入り行為について、建造物侵入罪の成否、および正当業務行為等による違法性阻却の余地があるか。
規範
建造物侵入罪における侵入とは、管理者の意思に反して建造物内に立ち入ることを指す。行為が社会的に正当な活動の一環としてなされたと主張される場合であっても、管理者の承諾がなく、かつ手段・態様において相当性を欠く場合には、刑法35条等の正当業務行為として違法性が阻却されることはない。
重要事実
被告人らは、特定の政治的または社会的な目的(詳細は判決文からは不明)に基づき、本件建造物への侵入行為に及んだ。被告人側は、上告理由において憲法違反や事実誤認を主張し、当時の社会的事情等から当該行為は正当化されるべきであると争った。
あてはめ
最高裁は、被告人が主張するような諸般の事情を考慮しても「本件建造物侵入行為を正当化することを得ない」と判断した。これは、管理者の事実上の平穏を害する態様での立ち入りであれば、その動機や目的の如何を問わず、直ちに違法性が否定されるものではないことを示唆している。原判決が下した建造物侵入罪の成立に係る判断は、憲法および刑法上正当であるとされる。
結論
被告人らの行為は建造物侵入罪を構成し、上告は棄却される。特定の事情に基づく正当化の主張は認められない。
実務上の射程
本判決は、建造物侵入罪における違法性阻却の限界を示す極めて簡潔な決定である。司法試験においては、表現の自由(憲法21条)や労働基本権(憲法28条)を背景とする建造物侵入の事案において、目的の正当性があっても手段の相当性を欠けば正当化されないとする論理を補強する際に引用し得る。
事件番号: 昭和26(あ)5138 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な理由なく他人の建造物に侵入する行為は、刑法130条前段の建造物侵入罪を構成し、これに同条を適用することは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人等は、正当な事由がないにもかかわらず、判示の建造物に侵入した。被告人等は本件行為について憲法違反を主張して上告した。 第2 問題の所在(論点):…
事件番号: 昭和57(あ)347 / 裁判年月日: 昭和60年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】学校長が管理権に基づき立入りを禁止した校内に、反対運動の目的で門扉を乗り越えて侵入する行為は、動機や目的が正当であったとしても、手段の相当性を欠き正当行為として違法性が阻却されることはない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる養護学校義務制に反対する運動に従事していた。その過程において、東京都足…