判旨
憲法28条が保障する団体交渉権等の行使として行われたものではない建造物侵入の行為については、正当な労働基本権の行使としての違法性阻却を認める余地はなく、刑法130条前段の建造物侵入罪が成立する。
問題の所在(論点)
正当な労働活動(団体交渉等)を目的としない建造物侵入の行為について、憲法28条の保障を根拠に刑法130条の適用を回避できるか。
規範
労働基本権(憲法28条)に基づく行為として刑罰法規の適用が否定されるためには、当該行為が客観的に団体交渉や争議行為等の正当な業務の範囲内で行われたものであることを要する。これに該当しない行為については、憲法28条の保障の枠外であり、通常の刑罰法規の適用を免れない。
重要事実
被告人が建造物に侵入した行為について、弁護人は憲法28条が保障する団体交渉権の行使であるとしてその違法性を争った。しかし、原判決の認定によれば、本件の建造物侵入の所為は、実態として団体交渉のために行われたものではなかった。
あてはめ
本件における建造物侵入行為は、原審の事実認定により、団体交渉という正当な労働活動の目的で行われたものではないことが明らかである。したがって、被告人の行為は憲法28条の保障を受ける前提を欠いており、刑法上の建造物侵入罪の構成要件に該当し、違法性も阻却されないと解される。
結論
本件建造物侵入の行為は団体交渉のためになされたものではないため、憲法28条違反の主張は前提を欠き、被告人は刑罰を免れない。
実務上の射程
本判決は、労働活動と刑事罰の関係において、行為の目的が正当な労働基本権の行使といえない場合には憲法28条の保護が及ばないことを示した。答案上では、労働争議に伴う刑事責任の有無が問題となる際、行為の態様だけでなく、その目的・性質が「正当な業務」の範囲内か否かを判別する基準として活用できる。
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