本件においては原判示A職業安定所B出張所と被告人等が代表した日傭労働者とは使用者対勤労者というような関係に立つものではないのであるから、被告人等の本件所為が憲法二八条の保障する団結権ないし団体交渉その他の団体行動権の行使に該当しないことは多言を要しない。
憲法第二八条の保障する団結権ないし団体交渉その他の団体行動権の行使にあたらない一事例
憲法28条,刑法130条
判旨
憲法28条が保障する団結権等の団体行動権は、使用者対勤労者という関係に立つ者の間において、経済上の弱者である勤労者のために保障されたものである。したがって、職業安定所とその出張所に集う日雇労働者との間には使用者対勤労者の関係が認められないため、同条の保障は及ばない。
問題の所在(論点)
職業安定所等の公的機関に対して日雇労働者が行う団体行動が、憲法28条の保障する団体行動権の行使として保護されるか。すなわち、当該関係に「使用者対勤労者」の要件が認められるかが問題となる。
規範
憲法28条は、使用者対被使用者(勤労者)という関係に立つ者の間において、経済的弱者である勤労者のために団結権・団体行動権を保障し、適正な労働条件の維持改善を図ることを目的とする。したがって、同条の保障を受けるためには、当事者間に「使用者対勤労者」という関係が存在することを要する。
重要事実
被告人らは、日雇労働者を代表してA職業安定所B出張所に対して団体行動を行った。これに対し、当該行為が憲法28条により保障される正当な団体行動権の行使に該当し、違法性が阻却されるか、あるいは処罰が憲法違反となるかが争点となった。なお、具体的な起訴事実の内容は判決文からは不明である。
あてはめ
本件における職業安定所出張所と、被告人らが代表する日雇労働者との関係を検討するに、両者は雇用契約等の関係に基づく「使用者対勤労者」という関係に立つものではない。同条の趣旨は、経済的従属性を背景とした労使間における労働条件の維持改善にあるが、行政機関である職業安定所は労働力を受領し賃金を支払う主体ではない。したがって、被告人らの所為は憲法28条の保障する権利行使には該当しないと解される。
結論
被告人らの行為は憲法28条の保障する団結権等の行使には該当せず、同条違反を理由とする上告は理由がない。
実務上の射程
憲法28条の保障対象が「労使関係」を前提とすることを明示した射程の短い判例である。司法試験においては、公務員の労働基本権制限の文脈や、労働組合法上の労働者概念の解釈において、憲法上の権利の帰属主体を論じる際の基礎的な枠組みとして参照される。
事件番号: 昭和27(あ)6235 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合員らによる建造物侵入行為について、解雇の有効性等を争う背景があったとしても、その行為自体が不当なものであれば憲法28条等に基づく正当な行為とは認められず、建造物侵入罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらは、Bに対する解雇の効力等を争う過程で、建物管理者の意思に反して建造物に侵…
事件番号: 昭和29(あ)2531 / 裁判年月日: 昭和32年2月5日 / 結論: 棄却
本件A労働者組合に属する日傭労働者が、B職業安定所長に対し、賃金増額並びに完全就労等の要求をして、面会を求めるような関係は、憲法第二八条の保障する権利の行使に該当しない。