被告人等は野田市助役Aに対し、同市自由労働者の失業対策事業として一ケ月二〇日の就労方を要求交渉するに当つて、要求を受けて、助役室から退去しなかつたのであるが、被告人等と同市との間には使用者対被使用者というような関係は存しないのであるから憲法第二八条の保障する団結権乃至団体交渉権の行使であるという所論はその前提を欠くものといわなければならない。
憲法第二八条の保障する団結権ないし団体行動権の行使にあたらない一事例
憲法28条,刑法35条,刑法130条
判旨
憲法28条が保障する団結権等の労働基本権は、経済的弱者である勤労者の労働条件維持改善を目的とするものであり、使用者と被使用者の関係にある者相互間において認められるものである。
問題の所在(論点)
憲法28条の労働基本権(団結権・団体行動権等)の保障を受けるための主体的な要件として、当事者間に「使用者対被使用者」の関係が必要か。
規範
憲法28条は、使用者対被使用者(勤労者)という関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権ないし団体行動権を保障し、もって適正な労働条件の維持改善を図ることを趣旨とする。
重要事実
被告人らは、野田市助役に対し、同市の自由労働者の失業対策事業として1か月20日の就労を要求して交渉を行った。これに対し、被告人らが当該団体行動等につき憲法28条による保障を主張した事案である。
あてはめ
本件において、被告人らは野田市に対し失業対策事業としての就労を要求しているが、被告人らと野田市との間には、憲法28条が前提とする「使用者対被使用者」という関係は存在しない。したがって、被告人らの行為は同条の保障の枠外にあると判断される。
結論
被告人らと同市との間には使用者対被使用者の関係が存しないため、憲法28条の保障は及ばない。
実務上の射程
労働基本権の主体性に関する初期のリーディングケースである。憲法28条の趣旨を「経済的弱者の保護」と「労使関係の存在」に求めており、公務員や失業対策事業従事者等の労働者性・権利享受性が問題となる場面で、その保障の限界を画定する基準として引用し得る。
事件番号: 昭和26(あ)1957 / 裁判年月日: 昭和28年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条が保障する労働者の争議権は無制限ではなく、憲法が保障する他者の平等権、自由権、財産権等の基本的人権との調和を破らないことが、争議権の正当性の限界である。 第1 事案の概要:被告人Aほか10名は、労働争議の一環として争議行為を行ったが、その行為の態様が正当性の限界を超えているとして刑事責任…