原判決の説示が憲法二一条に違反するという主張が「欠前提」とされた事例―いわゆる高裁長官室乱入事件―
憲法21条
判旨
裁判所の判決理由において、表現の自由の制限に関する説示がなされたとしても、それが被告人の権利を侵害する意図でないことが明白であれば、憲法21条違反には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判所の判決における説示の内容が、憲法21条の保障する表現の自由を侵害するものとして違憲となるか。
規範
裁判所の判決における判旨の説示が、被告人等の表現の自由を不当に制限し侵害することを目的としたものでないことが判決文の文理上明白である場合には、憲法21条が保障する表現の自由の侵害には該当しない。
重要事実
被告人4名が上告した事案において、原判決の説示が憲法21条に違反し被告人らの表現の自由を侵害するものであると主張して上告がなされた。しかし、原判決が表現の自由を直接制限しようとしたかについては、判決文からは具体的な犯罪事実や表現行為の内容は不明である。
あてはめ
本件における原判決の説示内容を検討すると、それが被告人らの表現の自由そのものを侵害しようとしたものでないことは判決文の記載から明白である。したがって、表現の自由を不当に制約する実質的な違憲性は認められない。
結論
被告人らの主張は前提を欠き、憲法21条違反には当たらないため、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所の説示が憲法上の権利を侵害していると主張する場合には、その説示が単なる理由付随的なものか、あるいは実質的に権利を不当に制約する意図・効果を持つものかを区別する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和47(あ)1964 / 裁判年月日: 昭和48年5月25日 / 結論: 棄却
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