原審において主張、判断がないとされた事例
憲法9条
判旨
上告審において憲法違反を主張するためには、原則として原審においてその旨の主張・判断がなされていることを要し、それがない場合は刑訴法405条の上告理由に該当しない。
問題の所在(論点)
控訴審で主張・判断されていない憲法違反の主張が、刑訴法405条所定の適法な上告理由にあたるか。
規範
最高裁判所に対する上告は、憲法違反または憲法解釈の誤りがあることを理由とする場合に認められる(刑訴法405条1号)。もっとも、当該憲法違反の主張が適法な上告理由となるためには、原則として原審(控訴審)においてその点についての主張がなされ、かつ判断を経ていなければならない。
重要事実
被告人は、自身の行為について憲法9条違反を理由に上告を申し立てた。しかし、原審(控訴審)の審理過程において、当該事案が憲法9条に違反するという主張はなされておらず、当然ながら原判決における判断も示されていなかった。
あてはめ
本件において被告人が主張する憲法9条違反の点は、原審において主張されておらず、判断も経ていない。また、記録を精査しても、職権で判決を取り消すべき重大な事由(刑訴法411条)は認められない。したがって、適法な上告理由としての要件を欠いているといえる。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由にあたらないため、同法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
憲法違反を上告理由とする場合の「原審における主張・判断」の必要性を確認した形式的な決定である。実務上、憲法問題を上告審で争うためには控訴趣意書段階から明確に主張しておくべきであることを示唆する。ただし、判決に影響を及ぼすべき憲法違反等がある場合には、刑訴法411条による職権破棄の可能性は残されている。
事件番号: 昭和29(あ)3374 / 裁判年月日: 昭和30年2月14日 / 結論: 棄却
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