判旨
表現の自由や団体行動権といえども公共の福祉による制限を受け、多衆の威力を用いて退去要求に応じず器物損壊や脅迫に至る行為は、憲法の保障の限界を逸脱し犯罪として処罰される。
問題の所在(論点)
憲法21条(表現の自由)および28条(団体行動権)の保障の限界。多衆による威力行使を伴う抗議活動が、これらの憲法上の規定により正当化され、刑事責任を免れるか。
規範
憲法21条の表現の自由は無制約ではなく、常に公共の福祉によって調整されるべきものであり、その方法が公安を害する場合には憲法の保障する自由の限界を逸脱するものとして処罰し得る。また、憲法28条の団体行動権は、使用者に対する被使用者という関係にない単なる個人の集合体には保障されない。
重要事実
被告人らは、多衆を語らって税務署に押し掛けた。税務署長から再三にわたる退去要求を受けたにもかかわらずこれに応じず、多衆の威力を示して署内の器物を損壊し、さらに係員らに対して脅迫を加えた。
あてはめ
被告人らの行為は、単なる意思表示の範囲を超え、多衆の威力を用いて公的機関に居座り、器物損壊や脅迫という暴力的態様を伴っている。これは「公安を害する」表現方法であり、公共の福祉による合理的制限の範囲内にある。また、本件集団は使用者に対する勤労者の団体ではないため、28条の保障も及ばない。したがって、憲法上の権利の行使として正当化される余地はない。
結論
被告人らの所為は憲法の保障の限界を逸脱しており、不退去罪や器物損壊罪等の刑事責任を免れない。原判決の有罪判断は妥当であり、憲法違反はない。
実務上の射程
集団行進や示威行為が暴徒化した場合の憲法的限界を示す。表現の自由の「方法」が他者の権利や公の秩序を侵害する場合、公共の福祉を理由に処罰可能とする初期判例として、あてはめ段階での「限界逸脱」の論拠に用いる。
事件番号: 昭和33(あ)2214 / 裁判年月日: 昭和36年12月22日 / 結論: 棄却
被告人は判示A新聞社に対し退職金等の支払を要求するため、判示退職者同盟員二十数名とともに、スクラムを組み、ワツシヨイ、ワツシヨイと掛声をかけ、足を踏み鳴らしながら、同新聞社に入り、階下および階上の事務室などを集団で示威行進したというのである。かかる被告人の所為は、仮りに被告人等被解雇者に憲法二八条の保障する団体行動権が…
事件番号: 昭和24(れ)3057 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、同条1項の目的達成のためにされた正当な行為にのみ認められるものであり、団体交渉等の際に行われた刑法上の暴行罪や脅迫罪に該当する行為には適用されない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議における要求貫徹のための団体交渉の場において、多衆の威力を示し、住居侵入、暴行…
事件番号: 昭和27(あ)11 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: 棄却
日雇労働者を中心として組織された小樽市合同労働組合が、市長の諮問機関である同市失業対策委員会に対し日雇労働者の労働条件改善のための交渉をする行為は、労働組合法にいわゆる団体交渉行為にあたらない。
事件番号: 昭和25(あ)481 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体交渉等の行為であっても、正当な目的の限度を逸脱した暴力行為は、労働組合法1条2項の趣旨に照らし、憲法28条の保障を受ける正当な行為とは認められない。したがって、かかる行為に対して暴力行為等処罰に関する法律を適用することは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合員ま…