日雇労働者を中心として組織された小樽市合同労働組合が、市長の諮問機関である同市失業対策委員会に対し日雇労働者の労働条件改善のための交渉をする行為は、労働組合法にいわゆる団体交渉行為にあたらない。
労働組合法にいわゆる団体交渉行為にあたらない一事例
労働組合法1条,憲法28条
判旨
憲法28条の団体行動権は使用者対被使用者の関係にある経済的弱者のための保障であり、行政庁の諮問機関に対する陳情や、多衆の威力を用いて暴行・脅迫を伴う交渉は、正当な団体交渉行為には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 行政庁の諮問機関に対する要望活動が、憲法28条および労働組合法上の「団体交渉」に該当するか。2. 多衆の威力を用いた暴行・脅迫を伴う交渉行為に正当性が認められるか。
規範
憲法28条が保障する団結権・団体行動権は、使用者対被使用者の関係に立つ経済的弱者である勤労者のためのものである。労働組合法1条1項が定める刑法上の免責を受ける「正当な」団体交渉行為とは、労働条件に関する交渉を指し、かつ多衆の威力を用いた暴行・脅迫などの行為を伴わないものでなければならない。
重要事実
被告人らは、小樽市の諮問機関である失業対策委員会に対し、市全体の失業対策に関する要望を伝える目的で行動した。また、同市の助役に対し賃金の要求を行う際、多衆の威力を示して暴行または脅迫に及んだ。これらの行為が労働組合法上の正当な団体交渉行為として免責されるかが争われた。
事件番号: 昭和25(あ)481 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体交渉等の行為であっても、正当な目的の限度を逸脱した暴力行為は、労働組合法1条2項の趣旨に照らし、憲法28条の保障を受ける正当な行為とは認められない。したがって、かかる行為に対して暴力行為等処罰に関する法律を適用することは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合員ま…
あてはめ
1. 失業対策委員会は市長の諮問機関であり、市の執行機関ではない。また、決議内容は労働条件ではなく市政一般に対する要望であるため、これは団体交渉ではなく「陳情」にすぎない。2. 助役に対する賃金要求は形式上は団体交渉の範囲内であるが、多衆の威力による暴行・脅迫が介在しているため、正当な団体交渉行為の限界を超えているといえる。
結論
被告人らの行為は正当な団体交渉行為には当たらず、刑事責任は免責されない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
団体交渉の対象(事項的限界)と態様(手段の相当性)の二点から正当性を否定した事例。政治的な陳情は労働組合の活動であっても免責の対象外となること、及び暴力の行使が正当性を失わせる決定的な要素であることを示す際に参照すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)3057 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、同条1項の目的達成のためにされた正当な行為にのみ認められるものであり、団体交渉等の際に行われた刑法上の暴行罪や脅迫罪に該当する行為には適用されない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議における要求貫徹のための団体交渉の場において、多衆の威力を示し、住居侵入、暴行…
事件番号: 昭和41(あ)617 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、労働組合の正当な行為についてのみ認められるものであり、暴力の行使に及ぶ行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するため、刑事免責の規定は適用されない。 第1 事案の概要:被告人は、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。第一審お…
事件番号: 昭和25(あ)3057 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表現の自由や団体行動権といえども公共の福祉による制限を受け、多衆の威力を用いて退去要求に応じず器物損壊や脅迫に至る行為は、憲法の保障の限界を逸脱し犯罪として処罰される。 第1 事案の概要:被告人らは、多衆を語らって税務署に押し掛けた。税務署長から再三にわたる退去要求を受けたにもかかわらずこれに応じ…
事件番号: 昭和42(あ)472 / 裁判年月日: 昭和43年7月12日 / 結論: 棄却
秋田県県政共闘会議を組織する労働組合の代表者である被告人甲、乙らが、秋田県知事公舎第二応接室において、知事に対し、昭和三六年度県予算に関し折衝した際、折衝が行き詰りとなつたため、知事は同公舎第一応接室において予算案の査定事務にとりかかつたところ、右労働組合の組合員である被告人丙、丁を含む組合員数十名は、右の経過をきいて…