必要的弁護人事件であつても、弁護人選任の請求がない限り、裁判所が控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人を選任しても、右手続は違憲でない。
必要的弁護事件において弁護人選任の請求なき場合に控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人を選任することは違憲か
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法289条,刑訴法411条1号,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
判旨
被告人が貧困等の理由で弁護人を依頼できない場合、国は弁護人選任の義務を負うが、これは被告人の請求があることを前提とする。被告人が弁護人の選任を請求した事跡が認められない以上、選任の時期等を理由に憲法違反を主張することはできない。
問題の所在(論点)
被告人が自ら弁護人を依頼できない場合に、国が弁護人を選任すべき義務を負うための要件、および被告人からの請求がない場合における弁護人選任の遅滞等の憲法違反の成否。
規範
憲法37条3項前段は、被告人が貧困その他の事由により自ら弁護人を依頼できないときに、国に対して弁護人の選任を請求する権利を保障している。国が弁護人を付すべき義務を負うのは、被告人からの適法な選任請求があった場合に限られる。
重要事実
被告人は刑事裁判の原審において、弁護人の選任時期が遅れたこと等を理由に憲法違反を主張して上告した。しかし、記録上、被告人が裁判所に対して貧困等を理由とする弁護人の選任を請求した事跡は認められなかった。また、被告人自身が法定期間内に控訴趣意書を提出し、選任された弁護人も公判廷で当該趣意書に基づき陳述を行っており、被告人および弁護人のいずれからも裁判所の措置に対して異議は述べられていなかった。
あてはめ
本件において、被告人が国に対して弁護人の選任を請求した事跡が記録上認められない。憲法上の弁護人依頼権(37条3項)は被告人の請求を待って国が義務を負う性質のものであるから、請求がない以上、国に不当な選任の遅滞があったとはいえない。また、被告人は自ら控訴趣意書を提出し、その後の公判でも弁護人がこれに沿った活動を行い、手続上の異議も出されていないことから、実質的な防御権の侵害も認められない。
結論
被告人から弁護人選任の請求がなされていない本件においては、選任時期に関する憲法違反の主張は理由がなく、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
憲法37条3項の「国選弁護人依頼権」が発生するための前提条件として「被告人の請求」が必要であることを示した判例である。答案上では、国選弁護制度の趣旨を論じる際や、被告人の権利行使がなされていない段階での国の義務を否定する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5465 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項前段に基づく国選弁護人の選任は、被告人からの選任の請求がある場合にのみ義務付けられるものであり、請求がない場合にまで選任を要するものではない。 第1 事案の概要:刑事被告人(上告人)が、公判手続において弁護人が選任されていない状態であったことにつき、憲法37条3項の保障する「弁護人を…