「被告人は同年(昭和二七年の意)三月二六日某農業協同組合購買部において他人の現金三一九六円を窃取したものである。」という起訴状の記載は必ずしも訴因の明示として欠くるところはない。
起訴状に訴因が明示されていると認められる一事例
刑訴法256条2項
判旨
累犯加重規定(刑法56条、57条)は、前科等の情状を考慮して刑を量定するものであり、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
累犯の加重を定めた刑法56条、57条の規定は、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものとして、憲法39条(二重処罰の禁止)に違反するか。
規範
憲法39条が禁ずる二重処罰とは、既に確定した判決により刑罰を科された特定の犯罪について、再び処罰することを指す。累犯加重は、新たな犯罪(後犯)に対する刑を量定するにあたり、被告人の前科やその他の情状を考慮して刑罰の程度を定める仕組みであり、前犯に対する確定判決の効力を変更したり、前犯を再度処罰したりするものではない。
重要事実
被告人は昭和27年3月、特定の購買部において現金3,196円を窃取したとして窃盗罪で起訴された。被告人には前科があったため、第一審判決は累犯加重を適用して量刑を決定し、控訴審もこれを支持した。これに対し被告人側は、一度処罰された事実を理由に刑を重くすることは、憲法39条の二重処罰禁止の原則に反すると主張して上告した。
あてはめ
原審が被告人の前科等を考慮して第一審の量刑を相当としたのは、後犯である本件窃盗罪の処罰に際し、被告人の反社会性や再犯の危険性といった情状を評価したに過ぎない。これは前犯に対する処罰を二重に科すことを是認したものではなく、後犯の適正な責任評価の一環として行われたものである。したがって、憲法39条が禁止する「既に処罰された犯罪について重ねて処罰すること」には該当しない。
結論
累犯加重規定(刑法56条、57条)は、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
量刑上の不利益取扱いが二重処罰にあたるか否かの判断基準を示す。累犯加重だけでなく、前科を情状として考慮すること全般の合憲性を支える根拠として活用できる。答案上は、憲法39条の「二重の危険」の意義と、量刑判断における事実考慮の区別を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和25(あ)2823 / 裁判年月日: 昭和27年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の累犯加重規定は、過去の犯罪に対する再度の処罰を意味するものではなく、憲法39条の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が新たな罪を犯した際、過去に確定判決を受けた前科があることを理由に、刑法56条以下の規定に基づき累犯加重が行われた。これに対し、弁護人は累犯加重が憲法に違…