判旨
罰金等臨時措置法の施行後の犯罪については、刑訴法335条1項に基づき法令の適用を示す際に、総則規定である同法を必ずしも常に引用・摘示する必要はない。
問題の所在(論点)
刑罰を科す判決において、罰金額を算出する根拠となる「罰金等臨時措置法」の規定を、刑訴法335条1項にいう「法令の適用」として常に判決書に摘示しなければならないか。
規範
刑訴法335条1項の「法令の適用」を示すにあたり、当該犯罪が罰金等臨時措置法の施行後に行われたものである場合には、同法が総則的規定としての性質を有することから、判決書において同法を必ずしも明示的に示すことを要しない。
重要事実
被告人が罰金刑に処せられた事案において、第一審または控訴審の判決書において罰金等臨時措置法の適用が明示されていなかった。弁護人は、これを法令の適用を示さない違法(刑訴法335条1項違反)であるとして上告を申し立てた。
あてはめ
本件犯罪は罰金等臨時措置法の施行後に行われたものである。同法は罰金額等の引き上げを定める総則的な規定であり、実体法上の罪刑を構成する各本条とは異なる性質を持つ。したがって、刑訴法335条1項が要求する法令の摘示において、これら総則的な規定まで逐一掲示しなくても、法の適用に誤りがない限り、同条項に違反するものではないと判断される。
結論
判決書において罰金等臨時措置法の適用を明示しなくても、刑訴法335条1項の法令の適用を欠いた違法には当たらない。
実務上の射程
判決書の記載事項に関する手続的論点である。実務上、罰金刑を科す際に同法の引用が省略されていても、それのみをもって直ちに形式的な法令適用欠如の違法を問うことはできないという射程を持つ。答案上は、判決の理由不備や法令適用の違憲・違法を検討する際の補助的知識として位置づけられる。
事件番号: 昭和37(あ)917 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
刑訴三三五条一項所定の法令の適用を示す場合に、罰金等臨時措置法の適用は必ずしもこれを常に示す要がないことは、昭和二六年(あ)第三九七六号、同二七年一〇月二日第一小法廷決定、刑集六巻九号一〇九七頁以下の示すところである。