本件は罰金臨時措置法施行後の犯罪であるから、刑訴三三五条所定の法令の適用を示す場合に同措置法を必ずしも常に示す必要はない(昭和二六年(あ)三九七六号、同二七年一〇月二日第一小法廷判定、判例集六巻九号一〇九七頁を参照)。
判決に罰金等臨時措置法の適用を示すことの要否
罰金等臨時措置法3条,刑訴法335条
判旨
罰金等臨時措置法施行後の犯罪について、有罪判決において刑事訴訟法335条に基づき法令の適用を示す際、必ずしも常に同措置法を明示する必要はない。
問題の所在(論点)
有罪判決において「法令の適用」を示す際、罰金の額を調整する規定である罰金等臨時措置法を明示しないことが、刑訴法335条1項の法令適用表示義務に違反するか。
規範
刑罰を科す有罪判決において、刑事訴訟法335条1項に基づき法令の適用を示す場合であっても、罰金等臨時措置法施行後の犯罪については、必ずしも同措置法の適用を常に具体的に引用し、表示することを要しない。
重要事実
被告人が犯した罪に対し罰金刑が科された事案において、原判決が有罪判決の「法令の適用」欄で罰金等臨時措置法に言及していなかった。弁護人は、これを憲法違反および法令違反(刑訴法335条違反)であるとして上告した。
あてはめ
本件犯罪は罰金等臨時措置法の施行後に行われたものである。同法は罰金額を一般的に引き上げる機能を持つが、同法施行後の犯罪について刑法の罰金条項等を適用する場合、同法の介在は前提となっている。したがって、判決文において個別に同法を明示しなくとも、適用される法令の特定に欠けるところはなく、刑訴法335条の趣旨に反しない。
結論
罰金等臨時措置法を明示しなかった原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
有罪判決の構成に関する手続的論点である。実務上、特別法による修正がある場合でも、その修正が一般的・包括的なものであれば、必ずしも全ての根拠条文を羅列する必要がないことを示唆する。ただし、答案作成上は、罪刑法定主義の観点から適用条文を正確に摘示するのが原則であるため、本判例は不備を争う側への反論として機能する限定的な射程を持つ。
事件番号: 昭和26(あ)3976 / 裁判年月日: 昭和27年10月2日 / 結論: 棄却
罰金等臨時措置法施行後の犯罪について同法をも適用処断するにあたつては同法の適用を必ずしも常に示す必要がない。