判旨
刑事訴訟法335条1項が定める法令の適用の示示において、罰金等臨時措置法を常に明示する必要はない。また、最高裁判所の判例がある場合には、それに反しない高等裁判所の判断は上告理由(刑訴法405条3号)に該当しない。
問題の所在(論点)
有罪判決において罰金等臨時措置法の適用を明示する必要があるか、および、最高裁判所の判例が存在する状況下で他の高等裁判所判例との不一致を理由に刑訴法405条3号の上告理由を構成できるか。
規範
裁判所が有罪の言渡しをする際、刑事訴訟法335条1項に基づき法令の適用を示す必要があるが、罰金等臨時措置法については必ずしも常にこれを示すことを要しない。また、最高裁判所の判例が存在する事項について、その判例と抵触しない限り、高等裁判所の判決が他の高等裁判所の判例と異なっていたとしても、刑訴法405条3号の「最高裁判所の判例がない場合において、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の高等裁判所の判例と相反する判断をしたとき」には当たらない。
重要事実
被告人が有罪判決を受けた際、原判決が罰金等臨時措置法の適用を明示していなかった。弁護人は、これが福岡高等裁判所の先例(判例)に反するものであると主張し、刑訴法405条3号所定の上告理由(判例相反)があるとして上告した。
あてはめ
本件について検討するに、最高裁判所(昭和27年10月2日決定)は既に「罰金等臨時措置法を必ずしも常に示す必要はない」との判断を示している。本件原判決はこの最高裁の判断枠組みに沿ったものであり、先行する最高裁判決と相反するものではない。刑訴法405条3号が規定する「最高裁判所の判例がない場合」という要件を充足しないため、福岡高等裁判所の判例と異なる運用がなされていたとしても、適法な上告理由とは評価されない。また、事実誤認の主張は405条の上告理由に該当せず、411条を適用すべき職権調査事由も認められない。
結論
原判決には判例相反の違法はなく、上告は棄却される。罰金等臨時措置法の適用明示は、有罪判決の法令適用において常に必須の要件ではない。
実務上の射程
刑事判決書における「法令の適用」の記載程度に関する指針となる。罰金刑の増額等に関わる罰金等臨時措置法の引用漏れが直ちに理由不備や法令適用の誤り(刑訴法335条1項違反)とはならないことを明確にしている。また、上告理由形成において「最高裁判例の不存在」が論理的前提であることを示す実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和26(あ)3976 / 裁判年月日: 昭和27年10月2日 / 結論: 棄却
罰金等臨時措置法施行後の犯罪について同法をも適用処断するにあたつては同法の適用を必ずしも常に示す必要がない。
事件番号: 昭和27(あ)5328 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判の有罪判決において、罰金等臨時措置法2条のような総則規定は、刑訴法335条1項にいう「法令の適用」として必ずしも常に判決文に示す必要はない。 第1 事案の概要:被告人が罰金等臨時措置法施行後の犯罪事実により起訴され、有罪判決を受けた事案。原判決において、同法2条の適用が明示されていなかった…