判旨
被告人が当初は窃盗の主観で臨んだとしても、現場で発見されたことを機に暴行・脅迫を用いて強盗を遂行した場合は、強盗罪の成立を認めることができる。また、証拠説明において犯罪事実と対照して認定根拠が明白であれば、証拠挙示の手続に違法はない。
問題の所在(論点)
1.窃盗の意思で着手した者が、現場で発見された後に強盗へと及んだ場合、強盗罪の既遂を認めることができるか(主観の変容と罪名)。2.判決における証拠説明が簡略な場合、認定根拠の明示として不十分(理由不備)となるか。
規範
当初は窃盗の主観で犯行に着手したとしても、その実行の過程で発見されたなどの事情により、事後的に暴行・脅迫を用いる意思が生じ、これを用いて財物を奪取、あるいは奪取を継続した場合には、強盗罪の構成要件を充足する。また、判決書における証拠の挙示は、判示事実と対照してどの証拠がどの事実に連結するかが客観的に把握できる程度に記載されていれば足りる。
重要事実
被告人A、B、Cらは、当初、財物を盗む(窃盗)目的で現場に侵入した。しかし、屋外で見張り役を担当していた被告人を含む犯行グループは、屋内に侵入した際、宿直員に発見された。この不測の事態を受け、被告人らはその場で強盗に及ぶことを決意し、暴行・脅迫を用いて強盗の犯行を完遂した。原審は、被告人Aの公判供述等を証拠として、これら一連の事実を強盗罪として認定した。
あてはめ
1.被告人の供述調書によれば、当初は盗むつもりであったが、宿直員に発見されたため「遂に強盗をするに至った」という経緯が自供されている。この変容した意思に基づく実行行為は強盗罪を構成するため、強盗の犯行を全部認めた原審の認定は妥当である。2.証拠説明において、被告人の関係部分について「判示と同趣旨」の供述を挙示している場合、判示事実と対照すれば、どの証拠によってどの犯罪事実を認定したかは明白に知り得る。よって、個別の物件を明記せず「押収物件全部」と記載する等の証拠調手続も、内容が判明する以上は違法ではない。
結論
被告人らが窃盗から強盗に転換して犯行を継続した事実に鑑み、強盗罪の成立を認めた原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
窃盗から強盗へのいわゆる「格上げ」が生じた事案における強盗罪の認定、および判決書における証拠挙示の程度に関する実務上の指針を示す。事後強盗(刑法238条)ではなく、当初の窃盗から強盗へと犯意が確定的に変容したケースとして処理される際の事実認定の在り方を裏付けるものである。
事件番号: 昭和22(れ)297 / 裁判年月日: 昭和23年3月9日 / 結論: 棄却
數個の證據を綜合して事實を認定する場合には、個々の證據を各別に観察すると、それが事實の如何なる部分の證明に役立つか紛らわしいことがあつても、これら數個の證據がかれこれ關連して相互に矛盾しない限りそれらを綜合しておのずから特定の事實が認定されるにおいては、このような證據説示の方法も許さるべきである。
事件番号: 昭和24(れ)28 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであ…
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。