一 記録によれば、原審第四回公判において所論のように判示に更迭があり、公判手續の更新が行われたのであるが、同公判調書には論旨摘録の通り、訴訟關係人かいずれも第一回公判調書記載と同趣旨の辯論をなしたものの如く記載せられていることが認められる。しかし、原審第二回公判期日は共に何等の實体的辯論もなく延期されているのであつて、第三回公判期日においてはじめて人定尋問検事の控訴事實の陳述及び被告人の尋問等が行われたものであることが記録上明白なのである。されば所論第四回公判調書の更新に關する記載中「第二回公判調書記載と同趣旨………」とあるのは、すべて「第三回公判調書記載と同趣旨………」の誤記に過ぎないものであると認められるのである。從つて原審公判手續には所論のような違法はない。 二 舊刑訴法第三六〇條第一項は「有罪ノ言渡ヲ爲スニハ罪ト爲ルヘキ事實及證據ニヨリ之ヲ認メタル理由ヲ説明」することを規定しているに過ぎない。夫故、有罪判決における證據説明としては罪となるべき事實が如何なる證據により認定せられたかを明確にするため具体的にその證據を特定しその内容を説示するのを以て足るのであつて、この要請を充するものである以上、事實認定の資料たる證據を一括して舉示することを妨ぐべき何等の理由もなく、必ずしも所論のように認定した個々の事實につき各別にその證據を摘示してその關連を一々明らかにする必要はないのである。この事は併合罪の係にある各個の罪を構成する事實についてもその理を異にすべきものではない。いま原判決の證據説明をみるに原判決は併合罪の關係にある各個の犯罪事實を各別に認定判示しながら、その認定資料である證載はこれを一括舉示していることは所論の通りであるが、各證據につき具体的にこれを特定し且つその内容を明らかにしているのであるから、これを目して違法ということはできない。原判決には所論のような違法はない。
一 第三回公判調書と記載すべきところを第二回公判調書と記載した場合と誤記たることの認定 二 判決における證據説示の程度
舊刑訴法60條,舊刑訴法64條,舊刑訴法360條第1項
判旨
有罪判決における証拠の説示は、具体的に証拠を特定しその内容を説示すれば足り、複数の犯罪事実に対する証拠を一括して挙示しても違法ではない。また、強盗罪等において被害物件の価格は罪となるべき事実を構成しないため、判決での認定やその証拠理由の判示は必ずしも必要とされない。
問題の所在(論点)
1. 併合罪の事案において、個々の犯罪事実と証拠の対応を個別に明示せず、証拠を一括して挙示する判決の方式は許されるか。 2. 強盗罪等の判決において、被害物件の価格を認定し、その証拠理由を判示する必要があるか。
規範
旧刑訴法360条1項(現行刑訴法335条1項)が求める証拠の説示とは、罪となるべき事実が如何なる証拠により認定されたかを明確にするため、具体的に証拠を特定し、その内容を説示することをいう。したがって、事実認定の資料たる証拠を一括して挙示することも許容され、認定した個々の事実ごとに各別に証拠を摘示し、その関連を一々明らかにする必要はない。この理は、併合罪の関係にある各個の罪についても同様である。また、強盗罪等において被害物件の価格そのものは「罪となるべき事実」を構成しないため、その認定や証拠理由の判示を欠いても直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人が強盗等の罪に問われた事案において、原判決は、併合罪の関係にある各犯罪事実を個別に認定しながら、認定資料である証拠を一括して挙示していた。また、被害物件の価格について、証拠書類(被害届)の記載と精密に符合しない金額を判示していた。弁護人は、証拠挙示の方法が不適切である点、および被害価格の認定が証拠と矛盾する点に違法があると主張して上告した。
あてはめ
1. 証拠の説示について:原判決は各証拠を具体的に特定し、その内容を明らかにしている。この方法によれば、どの証拠から事実が認定されたかが明確であり、刑訴法の要請を充足する。併合罪であっても証拠を一括して挙示したことのみをもって違法ということはできない。 2. 被害価格について:強盗罪の成立において被害物件の価格そのものは構成要件的要素ではない。したがって、その認定や証拠との厳密な整合性がなくとも、判決の結論に影響を及ぼす違法とはいえない。本件の価格認定も、証拠を総合すれば合理的に肯定できる範囲内である。
結論
本件各上告を棄却する。判決の証拠説示および事実認定に違法はない。
実務上の射程
裁判員裁判等の実務においても、判決書における証拠の挙示は「罪となるべき事実」との対応が理解できれば足り、一括挙示自体は許容される(刑訴規則218条参照)。また、構成要件に直接関わらない情状的事実や付随的事実については、厳密な証拠との対応関係が求められないことの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和25(れ)120 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の事実を判示する際、共謀の成立を認めるに足りる事実が摘示されていれば足り、共謀の具体的日時、場所、内容等を詳細に判示する必要はない。 第1 事案の概要:被告人は、他人と共謀して強盗を行ったとして起訴され、有罪判決を受けた。弁護人は、原判決の判示において共謀の具体的な内容が示されていない…