一 判決に舉止すべき證據説明は判示の犯罪事實について之を爲すべきもので罪となるべき事實でないものについては證據によつて之を認めた理由を明示する必要はない。押收物件が犯人以外のものに屬するかどうかの認定は、もとより罪となるべき事實の認定でないから所論のように原判決引用の證據によつて本件押收になつている拳銃四挺が犯人以外のものに屬しないかどうかが明らかでないとしてもこれを以て原判決が違法のものであるとはいえない。 二 刑訴第三六〇條第一項に、「證據により之を認めた理由を説明し」とあるのは、犯罪事實に對する證據を示して、その證據と犯罪事實との關係を明らかにすることを言うのであつて、その關係が明らかにされている以上證據説明の方法については何等制限するところはないのである。要は證據と犯罪事實との間の連絡を明らかにする程度に説示すれば足り必ずしも證據の内容を一々瓢別して顯さなければならないと言うものではない。
一 押收物件が犯人以外のものに屬しないとの認定につき證據説示の要否 二 刑訴第三六〇條第一項の法意と證據説示の方法
刑法19條2項,刑訴法360條1項
判旨
判決における証拠説明は、証拠と犯罪事実との連結が明らかになる程度に説示すれば足り、証拠内容を個別に甄別して判示する必要はない。また、没収の対象が犯人以外の者に属するか否かの認定は罪となるべき事実の認定ではないため、証拠による認定理由の明示は不要である。
問題の所在(論点)
判決書における犯罪事実の「証拠の説明」として、複数の証拠を包括的に挙示する「通じ」等の表現による説示が許されるか。また、没収要件(犯人以外の者に属しないこと等)の認定について証拠による理由の明示が必要か。
規範
旧刑事訴訟法360条1項(現行法335条1項)にいう「証拠により之を認めた理由を説明」するとは、犯罪事実に対する証拠を示し、両者の関係を明らかにすることをいう。その関係が明らかである限り説明の方法に制限はなく、証拠と犯罪事実の連結が明らかになる程度に説示すれば足り、必ずしも個々の証拠内容を甄別して示す必要はない。また、押収物が犯人以外の者に属するか否かの認定は、罪となるべき事実(構成要件事実)の認定ではないため、証拠により認めた理由を明示する必要はない。
重要事実
被告人らは強盗等の罪に問われ、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。その際、裁判所は拳銃4挺の没収を言い渡したが、証拠説明において、複数の被害届や供述調書等を「通じて」事実を認定した。被告人側は、どの証拠が判示事実のどの部分に対応するか不明である点、および没収物件が犯人以外の者に属しないことを証拠により認定していない点は、理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
証拠説明については、原判決が挙げた被害届や調書等の各証拠を認定事実と個別に対照すれば、それらを通じて判示事実を認定できることが客観的に明らかである。したがって、証拠と犯罪事実の連結は示されており、説明として欠けるところはない。没収については、刑法19条等の没収要件の存否は「罪となるべき事実」そのものではないため、判決書において証拠に基づきその理由を詳しく説示する義務はない。ゆえに、違法とはいえない。
結論
本件証拠説明および没収の認定手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法335条1項の「証拠の標目」の程度を示す。実務上、個々の証拠と事実を詳細に紐付ける必要はなく、全体として証拠能力があり、かつ事実を推認させるに足りる証拠が示されていれば足りるという緩やかな基準を肯定した。また、付随的処分である没収の前提事実については、厳格な証明や詳細な理由付記が不要であることの根拠となる。
事件番号: 昭和22(れ)297 / 裁判年月日: 昭和23年3月9日 / 結論: 棄却
數個の證據を綜合して事實を認定する場合には、個々の證據を各別に観察すると、それが事實の如何なる部分の證明に役立つか紛らわしいことがあつても、これら數個の證據がかれこれ關連して相互に矛盾しない限りそれらを綜合しておのずから特定の事實が認定されるにおいては、このような證據説示の方法も許さるべきである。