判旨
公判調書に公開した旨の記載がなくても、公開を禁止した旨の記載がない限り、審判は公開されたものと推定される。また、証拠説明が不十分であっても、掲げられた証拠により判示事実が合理的に認定できるならば、理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
1. 公判調書に「公開した旨」の記載がない場合、審判公開の原則に違反するか。2. 判決の証拠説明に一部不備がある場合、直ちに「判決に理由を付せず、又は理由に齟齬があるとき」として破棄事由となるか。
規範
1. 憲法82条1項の審判公開の原則に関し、公判調書において公開を禁止した旨及びその理由の記載がない限り、特段の事情がない限り審判は適法に公開されたものと認めるべきである。2. 判決の理由不備(旧刑訴法410条19号、現行法378条4号参照)については、判決に掲げられた証拠によって犯罪事実を優に認定できる場合には、証拠説明に多少の不備があっても直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人は強盗罪に問われ、一審・二審で有罪判決を受けた。被告人は上告理由として、①二審の公判調書に審判を公開した旨の記載がないため公開原則に違反すること、②判決が証拠の一部を削除したため、強取した物件の認定について証拠説明に欠ける理由不備があること、③量刑不当を主張した。具体的には、被害品の中に特定の懐中時計や衣類が含まれるか否かの証拠関係が不明確であると訴えた。
あてはめ
1. 旧刑訴法60条2項4号(現行刑訴法も同様の趣旨)は公開を「禁止」した場合の記載を求めているに過ぎず、公開したこと自体の記載は必要的記載事項ではない。本件調書には公開を禁止した記載がないため、公開されたものと認められる。2. 原判決は証拠として挙示していた聴取書を後に削除したため、証拠説明が精細を欠く点は否定できない。しかし、被告人の供述や他の聴取書を総合すれば、現金や時計・衣類等の強取事実は十分に認定可能である。不備とされる品目も認定された合計点数の中に含まれていることが明らかであり、結論に影響を及ぼすような理由不備はない。
結論
本件審判が公開されなかったとはいえず、また判決の証拠説明にも実質的な理由不備は認められないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。
実務上の射程
刑事訴訟において、公判調書の記載から公開原則違反を争う際の限界を示す。また、判決の事実認定における「証拠の挙示」に関し、形式的な不備があっても、判決全体として認定の合理性が担保されていれば理由不備とはならないという実務上の判断基準を提供する。
事件番号: 昭和26(れ)1162 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白の任意性に疑いがない場合において、当該自白が証拠として採用され、かつ、それが唯一の証拠でないときは、自白の証拠能力および証明力に関する憲法および刑訴法の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の供述調書について、弁護人は任意性を欠くものであると主張して上告した。また、当該自白が唯一…