數個の證據を綜合して事實を認定する場合には、個々の證據を各別に観察すると、それが事實の如何なる部分の證明に役立つか紛らわしいことがあつても、これら數個の證據がかれこれ關連して相互に矛盾しない限りそれらを綜合しておのずから特定の事實が認定されるにおいては、このような證據説示の方法も許さるべきである。
數個の證據を綜合して事實を認定する場合の證據説示の方法
刑訴法360條1項,刑訴法410條19號
判旨
数個の証拠を総合して事実を認定する場合、個々の証拠がどの事実を証明するか必ずしも明確でないとしても、関連する複数の証拠を総合して特定の事実が認定される限り、その証拠説示に違法はない。窃盗の目的で凶器を携帯し、家人に見つかった際の居直り強盗を予期して共謀していた事実は、一部の供述等を総合することで認められる。
問題の所在(論点)
数個の犯罪事実につき、個別の証拠がどの事実に対応するかを明示せず一括して挙示する証拠説示の方法が、理由不備(刑事訴訟法上の違法)となるか。また、居直り強盗の予期・共謀を認めるための証拠判断は適法か。
規範
事実認定において数個の証拠を総合する場合、個々の証拠を各別に観察するとその証明対象が不明瞭な場合があっても、証拠相互が関連し矛盾しない限り、それらを一括して挙示し特定の事実を認定する手法は許容される。また、当初から「家人に発見された際は居直って脅迫・強取する」という予期・計画がある場合、凶器の携帯や見張り行為等の事実を総合して、共謀による犯罪の成立を認めることができる。
重要事実
被告人CおよびDは、A・Bと共謀し、E方の土蔵から物資を窃取しようと計画した。その際、家人に見つかった場合には居直って強盗する用意として、C所有の拳銃と日本刀を携帯した。実行時、被告人Cは外で見張りを担当し、Aが宅内に侵入して強盗行為に及んだ。原審は、被告人両名の供述、証人A・Bの証言、被害届等を総合して、第1の窃盗事実と第2の強盗事実を認定した。これに対し被告人側は、証拠説示の不明確さや、居直りの意思の欠如(拳銃は護身・自殺用であり日本刀は土蔵損壊用であった等)を理由に上告した。
あてはめ
証拠説示については、挙示された証拠を個別に検討すれば、第1または第2の事実のみに関するものが混在し、どの部分の認定を目指すか不明瞭な点がある。しかし、これらを総合的に判断すれば、自ずと判示第1および第2の各事実全体を認定することが可能であるため、理由不備には当たらない。また、居直りの意思についても、第1審公判調書中の被告人Cの供述等を総合すれば、万一の場合の居直り・脅迫の用意として凶器を携帯していた事実を認めることが可能であり、共謀の成立を否定する被告人側の主張は採用できない。
結論
原判決の証拠説示および事実認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所が複数の証拠を「総合して」事実を認定する際の説示の許容範囲を示したもの。実務上、証拠ごとの証明力を個別に論じる必要はなく、全体として論理的整合性があれば足りるとされる。また、予備的・条件的な強盗の共謀認定における凶器携帯の重要性を示す事例としても参照される。
事件番号: 昭和23(れ)1253 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 判決に舉止すべき證據説明は判示の犯罪事實について之を爲すべきもので罪となるべき事實でないものについては證據によつて之を認めた理由を明示する必要はない。押收物件が犯人以外のものに屬するかどうかの認定は、もとより罪となるべき事實の認定でないから所論のように原判決引用の證據によつて本件押收になつている拳銃四挺が犯人以外の…
事件番号: 昭和24(れ)2926 / 裁判年月日: 昭和25年5月12日 / 結論: 棄却
所論堀内齋判事が被告人の保釋決定に關與していることは所論のとおりである。しかし舊刑訴法第二四條第八號は上訴により不服を申立てられた裁判又はその基礎となつた取調に關與した場合をいうのであるから、所論保釋決定に關與した場合を含まないことは論議を要しないところである。(昭和二四年新(れ)第一〇四號昭和二五年四月二日大法廷判決…